開放型PETの開発進む 世界初の実用化へ 放医研 医療に革新的成果期待

脳やがんなどを精密に検査する技術として、核医学検査は近年めざましい普及をみせており、技術革新も日進月歩だ。PET(ポジトロン断層法)はその代表格だが、放射線医学総合研究所(放医研)は、診断しながら治療したり、全身を同時診断する革新的な開放型PETの開発を進め、基本技術を確立。洗練された医療装置を目指した仕上げの段階を迎えようとしている。

放医研が開発する次世代型PET(OpenPET)は開放空間を断層像として3次元画像化する画期的な技術を結集。なかでも、従来のPET検出器では画質劣化する問題を解決し、開放型PETの考え方でも画質劣化しないDOI検出器(3次元検出器)の開発は世界に先駆けたもので、光学機器や医療機器の関係メーカー等産学協力体制で、質の高い画像を実現する見通しを得た。また画像処理ボード(GPU)を使ってコストを抑えながら超高速画像再構成のアルゴリズムを開発してリアルタイム画像を実現するなど、基本性能を確保する技術開発にメドをつけた。

これによって、診ながらの放射線治療の実現が期待できるため、重粒子線がん治療などがんの病巣に的確にビームを照射し、安心で確実な治療の精度を格段に向上することができるという。

また、外科手術への応用も期待されており、PETで直接がんを見ながら腫瘍部分を取りきることができるほか、他臓器の機能を確認しつつ手術できるので、精度を大幅に向上する可能性を大きくひろげると期待されている。

さらに、全身を同時診断できれば、新薬の効き目などを全身にわたり同時計測できるので、薬効と副作用の診断が迅速かつ正確にできるため、創薬の開発にも大きなインパクトを与えると考えられている。

この装置を着想し、研究開発を進めている山谷(やまや)チームリーダーは、これまでに小型試作機3台を作って基本的な技術の開発を進めてきたが、「これから医療装置として洗練されたシステムに改良を急ぎたい」としている。

この革新的な研究開発については、先にドイツ・イノベーション・アワード「ゴットフリード・ワグネル賞2012」から最優秀賞が贈られるなど、世界的にも注目されており、重粒子線がん治療の大幅な精度向上をはじめ、医療に新たなステージを切り拓くことに、国の内外から期待が集まっている。


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