【寄稿】実績重ね、役割高まるFNCA FNCA日本コーディネーター 町 末男

注目された山本一太大臣の開会演説

原子力政策を担当する山本大臣はアジア原子力協力フォーラム(FNCA)第14回大臣級会合の議長として、開会挨拶の冒頭で「FNCAが大臣級の代表が緊密に議論して具体的な協力活動を進めているユニークなアジア協力の枠組みである」事を強調した。さらに、現政権はエネルギーの安定供給コスト低減などの観点から、引き続き、原子力発電を重要なベース電源として位置付け、現在停止中の原子力発電所については、安全が確認されれば活用していく事、また、責任あるエネルギー政策を再構築すべく検討中である事を報告した。

福島原発事故後も進むアジアの原子力発電計画―先行するバングラデシュとベトナム―

バングラデシュのフィロズ原子力委員長は「貧困と飢餓を無くす」目標を達成するために、原子力技術が重要な役割を果たすとのべ、13年10月2日にシェイク・ハシナ首相の出席の下で原子力発電所建設(200万kW、2020年運開)の起工式が行われたことを報告した。

ベトナムのティエン科学技術副大臣は原子力発電の最初の2つのプロジェクト(合計400万kW)はロシアと日本の協力で進めつつあり、FSがほぼ完成した事、人材育成のため、200人の大学生と大学院生をロシアなどで教育している事を強調した。

中国代表は原子力発電17基が運転中に加え、30基が建設中など、福島原子力事故後も着実に原子力発電拡大計画を進めている事を報告した。韓国代表は運転中の23基に加えて、2024年までに新たに11基を運転する予定であると述べている。

FNCA放射線利用プロジェクト成果の実用化戦略を討議

FNCAの活動の中で、「バイオ肥料」、「天然高分子の放射線加工」、「がんの放射線治療」、「品種改良」のプロジェクトでは、明確な利点のある実用化可能な成果が得られており、一部の国で商用化が進んでいるにもかかわらず、他の国では実用化が進んでいない。円卓討議では如何にして実用化を促進するかを論じた。エオン大臣からマレーシアでバイオ肥料プロジェクトの成果が原子力庁と民間企業との緊密な連携で商業的に利用されている事が紹介された。

開発を担当する原子力研究機関は、成果を利用する農業、工業、医療などのセクターと情報を共有し、連携するための連絡会議を設置し、実用化に向けた課題・戦略を討議し、必要な行動をとる事が合意された。これからの成果が期待される。

核セキュリティ文化の醸成

核セキュリティの強化は世界共通の重要な目標となっている。各国が「核セキュリティ文化」を構築する事が必要なことから、FNCAは2011年に「核セキュリティ・保障措置」プロジェクトを開始し、情報の共有、人材の育成を進めている。今回、IAEAのビダル課長は招待講演で各国が、先ず「核セキュリティ文化」の自己評価を行う事を求めた。すでに自己評価を行ったインドネシアから、その経験と成果が紹介された。

日本は原子力研究開発機構の核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)の活動を通して、各国の「核セキュリティ文化」の構築を支援する事、2014年12月にIAEAと共催でアジア諸国を対象とした「核セキュリティの研修コース」を実施する事を紹介し、各国の参加を促した。

決議案と議長声明

閉会セッションでは決議案を採択、ついで山本大臣が議長として、「核セキュリティ文化の醸成」、「FNCAプロジェクトの成果の活用」、「原子力平和利用とアジア地域の発展への貢献」の3点の重要性を強調した声明を発表した。

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今回の大臣級会合は、山本大臣の積極的な議長采配と各国代表の熱心な討議で大変有意義なものとなった。今後、決議案を受けて各国が適切な対応をとり、プロジェクトなどの活動が一層効果的に進められることが期待される。


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