過半数が「原子力は必要」と回答 スイスの世論調査

スイス政府は福島第一原発事故を契機に、総発電量の約40%を賄う国内原子炉5基を2034年までに段階的に閉鎖する方針を決めた。しかし、回答者の過半数が既存原子炉の必要性を認めるという世論調査結果がこのほど公表されており、国民が手放しで同政策を支持しているわけでは無いことが明らかになった。

この調査は、同国の原子力発電事業者団体「スイス・ニュークリア」が市場調査会社のDemoSCOPEに委託して14年連続で行っているもので、今回は昨年10月、同国で多数派を占めるドイツ語圏住民のほか、ティチーノ州のイタリア語圏に居住する合計2200名を対象に実施した。

それによると、回答者の64.3%が「スイスには既存の原子力発電所5基が必要」と答えるなど、原子力の利点を改めて確認。これは前年に実施した調査から3ポイント上昇している。

また、62%が「原子力にはコスト的な利点がある」としたほか、68%(前回は62.1%)が「安全に操業されている限り既存炉5基の運転を続けるべきだ」との見解を明示。回答者の4分の3(前回は74.2%)が、事業者による継続的な技術改善と設備の近代化を理由に5基の安全性を確信するなど、出来るだけ原子力の利点を活用すべきだとする国民は増加傾向にある。

その一方で、既存炉がCOの排出量削減に貢献していることを知る回答者は41.9%と少なく、英米と比較してその環境上の利点に対する認識は低いことが判明した。

このほか、連邦政府の脱原子力政策に関しては、前回調査より2ポイント減の73%が国内の電力需要量すべてを国内で賄うことを希望したものの、諸外国へのエネルギー依存を高める政策を望まない国民の割合は78%にのぼった。また、88%が「政府のエネルギー移行政策により供給保証が脅かされることはあってはならない」と答えており、前回回答の84%を上回っている。

なお、2012年初頭の調査によると、スイス国民の58%は、エネルギー移行政策のコストと影響が明確になるまで現行のエネルギー・ミックスにおける原子力と水力のシェアを維持したいと回答。78%はエネルギー移行政策、脱原子力政策に関する国民投票に参加したいと答えている。


お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで