〈Topic〉原子力産業の今後 進むべき道 優れた技術で国際的役割も

鳥井 原子力産業の進む方向に関する話に関連しますが、アジアの中で日本が、リーダーシップをとるためには何が必要ですか。例えば、中国を考えたときに、原子力の分野で日本がリードしていくためには何が必要ですか。

犬飼 まじめさみたいなところじゃないですかね。1一つのことをちゃんと考えるとか、まじめにそれを見ていくとか。

鳥井 必ず中国の原子力より日本の原子力が先に進んでいるからこそ、中国はぜひ日本に、技術を求め、相談をしという、そういう意味でも、原子力の技術はものすごく大事だと思うんですよね。そういう技術を日本が育てていくには、何が必要ですかね。

犬飼 すそ野の広い人材ということになるんではないですかね、お金もそうですね。

鳥井 優れた技術を維持するにも、国内に今後あまり需要がなければ、輸出という話になる。原子力を輸出することについて、皆さんはどう思っていますか。

羽倉 数年メーカーで勤務していたのですが、福島での事故の前後では、ビジネスモデルが大きく変化して、事故後は、輸出に関する仕事がかなり主になってきました。やはり会社としては、(原子力発電所を)建てないことには今いる人材を維持できないというのがあるので、どうしたって新設炉を建てたいと。実際には、日本とは基準が違ってすごく苦労も多いけれど、やはり輸出というのは産業界の生きていく道のひとつだと思っています。

鳥井 自分の問題としてとらえると、現実には勤務地が海外になってしまうかもしれませんよね。例えば、メーカーに就職したり、運転会社に就職したら、勤務地が海外になってしまうかもしれません。そういうことも含めて、1人のエンジニアとしてどう思いますか。

犬飼 僕も、海外への輸出という道には賛成です。ただ、私生活の面で、家庭を持つことを考えると、相手になる人が理解し、自分についてきてくれるかなと不安に思うことはあります。でも、最初にも言った通り、原子力やエネルギーの問題は、もはや一国で考えられることではないと思うので、チャレンジしたいと思います。

北薗 僕自身は、そこでやりがいがあって、いろいろな意味での楽しさがあれば海外での勤務はありなのかな、とは思います。

また、海外への展開を考えたときには、国の支援というか、安倍首相が自ら前面に立ち、スピーチするくらいの国の役割が必要だと思います。先日のトルコでみられたような首脳同士のトップ交渉が重要だと思います。またアジアでの日本の立ち位置を考えたときに、近隣国などとの競争のなかで、多少コストが高くても、日本のモノや安全技術が優秀だから、将来的に見たときに日本のモノを受け入れようとなっているのが現状だと思うのです。

ベトナムなど、色々な国や地域で日本の原子力発電所が受け入れられているのはそこ(技術や製品の優秀さ)だと思います。また、海外に日本の優れた技術が国際的に認められる証しとして、日本が輸出しているのだと見ることもできるので、すごく良いことだと、1人のエンジニアとしても思っています。

羽倉 語学の問題や、文化の違いなど苦労することは多いと思いますが、自分を鍛えるチャンスだと思って積極的に挑戦したい、また、しなければならないと思っています。

輸出ということを考えるときには、技術者として現地に赴くだけではなく、原子力を導入しようとする国の人たちを日本に招いて訓練するという役割もあるなと思っています。実際の建設は海外での仕事になりますけれど、それ以外の役割もたくさんありますから。トータルで考える必要があると思っています。

私たちの大学の研究所にマレーシアから研修生が来て、原子力利用や放射線管理の実習などを行ったことがあります。訓練など通じた交流、人材育成という観点もあると思っています。

鳥井 確かにそれはありますね。


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