〈Topic〉若い世代との対話活動 機会広げる連携がカギに

鳥井 先ほどの話では、高校生や大学生と対話活動をしているとのことでしたが、どういう印象ですか。

犬飼 特に大学なのですけれど、僕が今、他大学と一緒に対話などの活動をしたり、文系学生と一緒に行ったときの雰囲気として「どうでもいいと思ってその場にいるんだな」と感じることは多いです。例えば、「何でここへ集まってくれたの」と聞くと、「原子力について私はすごく知りたいんだ」と答える人はほとんどいなくて、相手側の人たちは、「いいよ、暇だから」ぐらいの感じです。それが今の、まさに現実だと思っています。

本当に、今、(原子力に)全く興味のない人達の興味を引くというのはすごく大変で、僕はその後、この人たちの経過を見ることはできないのですが、僕らと一緒に話した1つのことが、何かきっかけになり「ああ、なんか言ってたな」と言うくらいでも意味があると思います。

そういうくぎ打ち、つまり、考えるきっかけを提供するようなことを行うことはすごく大変なことですし、向こうも、大歓迎で僕らのことを受け入れてくれる人たちの方が少ないけれど、しっかりそういうくぎ打ちをしていって、何か必要に迫られたときに、自分たちのことを思い出してくれたらそれで良いというのが、僕の基本的な考え方です。

北薗 僕自身は、学園祭などで地域の方と交流するといった様々な活動をしていますが、やっぱり立場というのが大きい。立場によって聞いてくれる人、聞いてくれない人もいます。でも、話し手の自分たちが大学生だと良く聞いてくれる。良い意味ですごく立場を利用できているなと思います。確かに、聞きたいから来たわけでもなく、いろいろな知識があるわけでもない状態がスタートラインなんだろうな。そうした状態の人たちに、まず自分たちがどれだけ興味をひくような、食いつけるような話をして理解をしてもらえるか。草の根の活動ではないですけれども、最初はそれが一番重要で、そこで結果を出して次の段階に行くことが大切だろうと思っています。僕らにも、将来技術者・エンジニアになるという自覚はありますし、これからはもっとコミュニケーション能力を鍛えてやっていかないといけないというのが、僕自身、学園祭などでの活動を通して思ったことです。

鳥井 僕も、若い世代の議論は大人は無視できないだろうなと思っているんですよ。実は、僕は、高校生とそういう議論をやったりしているんですけれども。原子力に来る学生さんというのは、この2人を見ていると、ものすごく意識が高くて、目的意識を持ってやられて、とてもいいと思うんですけれども、どうですか。来ると変わって、原子力が好きになって出て行くのだろうか?

羽倉 今、自分たちの大学は「原子力」という名前がついた学科になっているので、ほかの一般的な学科に行くよりは、原子力や放射線の分野に興味がある人、意識が高い人が比較的多いとは思います。

特に事故後、例を挙げると、親から「そっち側(原子力の分野)に行っても、仕事できるのか」ということで反対されるけれども、「私は行く」と言って来ている人がいます。そういう人は強い意識は持っていると思います。まずは、こういう情熱を持って取り組める人という存在が重要なのではないかと思います。

犬飼 自分たちの学科の特徴として、原子力を学べば自分の地元に帰ってこられると思って勉強しに来る学生が多いんです。

なので、嫌いになって出て行くという人は、僕は見たことはない。それ以上に、進学して来た理由が明確なので、原子力や放射線だけでなく色々な分野の勉強にも手を広げるなど、良い意味での広がりを持った学科になっているというのが僕の印象です。

鳥井 なるほど。

ところで高校生以下のより若い層との対話はどうですか。私も高校生との対話をしているのですが、彼らも、僕みたいなじいちゃんが来るよりは、大学生が来たほうがうれしいのではないかとも思うしね。(笑)

犬飼 実は高校生と一緒に何かしようと、以前、ある高校にお願いに行ったのですが、原子力やエネルギーというテーマだと現実には難しい面があります。原産協会さんの協力も得て再度挑戦したいと思っているところです。

鳥井 本当は、今だからこそエネルギーのことを考えなければいけないし、原子力のことも考えなければいけないんだと思うのですが。

犬飼 絶対そうです。

僕がすごく印象に残っていることをお話ししたいのですが、それは教育実習のときでした。毎週1時間もらえるんですが、そのときに、「どういうテーマで話してもいいよ」と言われて、学校生活のことと、受験の大切さのこと、あともう1つは、原子力の大切さを話したときに、高校なので50分の授業時間中、だれも寝ることなく、「本当にそうだったのか」とか、「原子力って本当はどうなの」という反応もありました。僕なんかが語れるような話だと身近に感じてもらえたのかもしれません。「自分はそんなだって思ってなかったよ」など(原子力について)本当に純粋に思っている答えが返ってきました。彼らは確認する場所がないはずなんです。それを、たまたま僕が授業をやることで生徒たちから素朴な質問も出てくる。その時が、その生徒にとっていろいろ考えるアンテナが広がっていく瞬間ですよね。そういう瞬間はなかなか提供できないし、受験に必要ないことはなおさら難しい。

様々な組織と連携しながら機会を作っていくことがすごく大切だと実感しました。

鳥井 それはいいね。

犬飼 意外と教職課程の学生にエネルギーや原子力のことに対する意識付けをして行くことは大事なことかもしれないです。

鳥井 エネルギー問題は、実は若い人たちの時代のことを議論しているんですよね。温暖化して何か起こるのは、今の中学生か小学生の時代のことだから、若い人が考えなくてはいけない。たしかにちゃんと政治家が責任を持つことがとても大事なんだけれども、大人任せでいいのかというと、そうではないだろうと思います。

犬飼 先ほどから鳥井先生に、「そういう活動をしている君は大事なんだ、すごいよ、珍しいよ」と言ってもらいましたが、様々な人と対話をすることは、原子力の関係者みなが考えなければいけないことのはずなんです。エンジニアになろうという人間も、原子力に関わりのない人たちと対話することで、「おれやっぱり、こうだな」など、色々と再確認ができることもあると思います。こうした対話の場が、もっと広がればいいなと、すごく思いますね。

鳥井 YGNという若手の会では、そういう活動はしているんですか?

羽倉 そうですね、同世代の人たちを対象にすることが多いですね。最近では学生との対話会も行っていますが。

鳥井 もう少し若い世代は?

羽倉 それも、少しずつ考え始めていて、大学生にしても、これから専門分野を具体的に決めていく学部の1、2年生あたりをターゲットにしていく活動をしようかと考えています。

鳥井 それはぜひやってほしいと思いますね。やはり次世代のことは次世代の人たちにこそ考えてもらうことが非常に大切だと思いますので、これからの皆さんの活躍を期待しています。 (


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