リチウム資源 海水から 日本原子力研究開発機構 元素分離技術で回収、発電も

日本原子力研究開発機構は7日、イオン伝導体を用いた元素分離技術で、海水中のリチウムを回収し、かつ電気を発生させる革新的技術を発表した。核融合炉燃料製造やリチウムイオン電池などの原料となるリチウム資源を海水から回収するほか、使用済みリチウムイオン電池のリサイクルにも適用可能で、資源循環型社会実現に向けた画期的な成果といえる。海水の他、「にがり」も可能。

リチウムは近年、電気自動車やスマートハウス用電源などで需要が高まっているが、地上のリチウム資源は、チリ、アルゼンチンなど、南米諸国に偏在しており、日本への供給も、これらの国々からの輸入に100%依存している。また、南米の回収方法は、塩湖の水を1年以上かけて自然蒸発させる、いわば「天日干し」方式のため、今後の需要増に追い付かないことも懸念されている。本研究では、海水中に約2300億トンと、無尽蔵ともいえるリチウム資源の存在に着目し、回収技術の開発に取り組んだ。

研究に関わった原子力機構の星野毅氏の説明によると、海水と、リチウムを含まない回収溶液(リチウムを回収する媒体で希塩酸等)を、イオン伝導体(NASICON型リチウムセラミックス等)で隔離し、その間にリチウム濃度差を生じさせることにより、海水中のリチウムが自然に回収溶液へ選択的に移動する分離原理(=上図)を発案したものとしている。さらに、リチウムの移動に伴う電子を電極で捕獲することで、電気を発生しながらリチウムも回収することから、資源回収のゼロ・エミッション化を目指す革新的技術の確立といえ、今後は、イオン伝導体を薄く製作するためのコスト削減が実用化への課題などと述べている。


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