濃縮大手USECが破産申請 日独の原発停止で核燃料価格が低下

米オハイオ州パイクトンで「米国遠心分離濃縮プラント(ACP)」を建設中の米国濃縮会社(USEC)は5日、昨年12月に公表していた方針どおり、連邦破産法11条の適用をデラウェア地区の連邦破産裁判所に申請した。福島第一原発事故後、日本の原子炉50基以上が運転を一時停止したほかドイツの8基が閉鎖されたため、核燃料が供給過剰となり、過去10年間で最低レベルの価格低下が引き起こされたのが短期的に大きく影響。ACP計画に必要な物資の多くが価格高騰し、計画の範囲と日程に追加や変更が生じたことも資金繰り悪化の要因になったと説明している。

USECによると、裁判所に提出した財政再建計画は貸借対照表の改善とACP計画推進能力の強化、長期的な事業機会の獲得を目標とするもので、東芝、バブコック&ウィルコックス(B&W)社を始めとする投資家グループからは同意が得られたとしている。

破産申請によって同社の通常業務に支障を来すことはなく、米エネルギー省(DOE)から一部資金の提供を受けて実施しているACP用遠心分離機(AC)の研究開発・実証(RD&D)活動は継続して実施。昨年同社が操業を終了したパデューカのガス拡散法濃縮工場のDOEへの返還手続きや、在庫を使用した濃縮ウランの販売、ロシアからの低濃縮ウラン購入も影響なく続ける計画だ。

具体的な再建方法としては、5億3000万ドルの負債を5年満期の新たな債券および新株2億4040万ドル相当と交換。債券所有者達は2億ドル相当の新たな債券と約79%の普通株を受け取る一方、東芝とB&W社はそれぞれ、2019万ドルの新債券と8%の新株を受け取る。裁判所が再建計画を承認するまで90〜120日を要する予定で、この間の運転資金はUSECの子会社が提供。ただし、子会社は更正手続きの対象とはならないとしている。

USECは12年までに年間3800トンSWUの生産能力達成を目指して07年にACPの建設を開始。08年に核燃料サイクル事業分の融資保証20億ドルの適用を米エネルギー省(DOE)に申請したが「技術的、財政的な審査の結果、商業規模の操業に移行する準備ができていない」として却下された。その代わり、政府から技術実証開発支援金の提供を受けることで合意。2010年以降は、濃縮ウランの供給を受ける権利の取得など原子力フロントエンド事業の一貫体制確立を目指す東芝、B&W社からも出資を受けていた。


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