中国 世界の原子力市場進出へ テピア総研がセミナーで紹介

中国・アジア地域専門の民間シンクタンクであるテピア総合研究所は4日、日本技術者連盟との共催で「世界の原子力市場制覇に動き出した中国=新型炉開発から原子力輸出戦略まで」と題するセミナーを開催した。輸出用の主力設計として開発したCAPを含め、本格的な海外展開をもくろむ中国の原子力開発戦略の全貌が紹介された。

同総研の窪田秀雄主席研究員によると、中国国務院は福島第一原発事故後の2012年10月に「原子力発電安全規画」および「中長期原子力発電開発計画」を承認。この中で、福島第一原発事故後凍結されていた原発の建設を再開し、現在の「第12次5か年計画(2011年〜15年)」の期間中は内陸部の原発は着工しない、新規原発については第3世代炉の安全基準に適合しなければならない、などの方針を示した。

2013年1月に国務院が公表した「エネルギー発展規画」では、2015年時点の原子力発電設備が4000万kWになるとしたほか、20年時点の設備容量として、5800万kWが稼働中になるとの見通しを明らかにしている。

昨年10月には国家能源局が同国の原子力輸出戦略となる「原子力発電企業の科学発展を支える協調活動メカニズム実施計画」を発表した。原子力導入可能性のある国との政治・経済交流の重要議題に原子力輸出を含めるとともに、原子力発電輸出に関わる組織や指導を強化、国有銀行による貸し付けなど、国際プロジェクトへの参加を政府が支援する方針を表明。これを受けて今年1月には、中国核工業集団公司(CNNC)や中国広核集団有限公司(CGN)を中心とする輸出産業連盟が設立されている。

輸出用の主力にCAP1400と華龍1号

中国はすでに、パキスタンに原子炉を輸出した実績を持つが、高温ガス炉など先進的な原子力発電技術の開発に熱心で、外国技術の導入国産化を担当する国家核電技術公司(SNPTC)はウェスチングハウス社製の第3世代設計であるAP1000をベースにしたCAP炉を開発中。中国が知的財産権を有する140万kWのCAP1400については山東省石島湾で年内にも実証炉が着工する見通しで、輸出用として今後、積極的に世界市場に売り込んでいくと見られている。

また、国産の第3世代PWRとして、CGNはACPR1000+を、CNNCがACP1000を開発。これら2つを融合させた共同開発炉「華龍1号」の初期設計が完成したことを今年1月にCGN、今月4日にCNNCが発表しており、こちらも輸出炉として世界市場に展開予定との方針が示された。

高温ガス炉、高速炉も実証段階に移行

このほか、HTGR開発については06年に国家重大特別プロジェクトの1つに指定するほど力を入れており、清華大学で稼働する1万kWの実験炉に続き、20万kWの実証炉を12年12月に山東省石島湾で着工。軽水炉と併せて、将来の商業炉輸出を視野に政府が国の方針として後押しする旨を表明した。

さらに高速増殖炉についても中国は北京南部の原子能科学研究院で同国初の高速実験炉(CEFR)を11年7月から試運転中。60万kWの国産実証炉CFRも、23年の運転開始を目指して今年2月から概念設計を開始。100万kWの商業炉については30年の運転開始が提案されている。


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