米監査院、各国規制当局の活動を調査 「緊急時対応上の役割大きい」

米国政府監査院(GAO)は11日、日本を含む16か国における原子力規制当局の、福島第一原発事故後の活動について審査した報告書を公表した。各国当局が同事故を真摯に受け止め、それぞれの規制手続きや要件、インフラを強化する好機と捉えていることから、規制当局が今後も過酷事故の発生を最小限にとどめ、最も効果的な緊急時対応を確実にする上で主要な役割を果たし続けると明言。一方、こうした規制組織の強化に役立つ国際原子力機関(IAEA)のピアレビュー勧告について、その実行状況をIAEAが系統的に把握することが求められるとの問題点を指摘した。

GAOは連邦議会の要請に基づき、政府機関の財務検査や政策プログラムの評価を通じて予算の執行状況等を監査する機関。今回の調査項目は、(1)選定国における原子力規制当局の原子力安全強化活動(2)事故データの自動収集・伝達システムを各国が導入した度合い(3)同事故後、IAEA、世界原子力発電事業者協会(WANO)、EUの三機関が各国の原子力規制当局を支援し、世界の原子力安全促進のために取った対策――となっていた。

このためGAOは、2013年9月時点で世界の原子炉の78%をカバーする13の代表的な原子力発電国と3つの原子力導入中および検討国を選定。米国の関連連邦機関や諸外国の15規制当局、および国際機関にインタビューを実施し、情報を入手した。その結果、民生用原子力発電所に許認可を与え、監視を行う米原子力規制委員会(NRC)、原子力安全問題も含めて国内政策と国際機関・関連条約の間を調整する行政府に対し、次のような勧告を提示した。すなわち、(1)ピアレビュー勧告の実行状況をIAEAが系統的に追跡把握出来るよう後押しするなど、両者がともに協力して働く(2)NRCは、原子炉主要データの自動伝達システムをアップグレードすべきか、またそれをどのように行うべきかの判断を早めるよう考慮すべき――である。

GAOによると、NRCはこれらに対して同意も不同意も表明していないが、行政側は(1)について部分的に同意。(2)に対するコメントを避けたが、GAOはこれらの勧告を全面的に実行してこそ原子力安全は促進されるとの考えを強調した。

調査の具体的な発見事項としては、原子力発電国の中でも特に、日本で原子力規制の枠組が根本的に再構築されたとGAOは指摘。中国、スウェーデン、ベトナムでは規制当局に対する追加資源が手当てされつつあるとした。どの国も、以前は想定されていなかった事故シナリオに焦点を当てた安全性改善対策を講じており、ベルギー、カナダ、ロシア、米国では特に、規制当局が1サイトで複数の原子炉が関与するシナリオを策定中である点に言及。これに加えて、外部電源を喪失した場合のバックアップ電源など、緊急時設備に関する新たな要件が中心分野になっていると強調した。

また、6つの発電国の当局者は、原子炉データを収集し、規制当局と特定の技術専門家に伝達するシステムを自動化したと明言。このうち米国を含む3か国の当局者はGAOに対し、それらのシステムが外部電源喪失時のような緊急事態でも稼働可能になるよう徹底する対策を模索中だとしている。

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NRCの緊急時対応センターが刷新

米国ではTMI事故後に原子力規制委員会(NRC)が発電所データの自動伝達システムを整備したが、発電所における演習実施時や、実際の事象発生時にNRCの対応拠点となる本部オペレーション・センター(HOC)は昨年12月、最新の機能を備えた対応部門として装いも新たにオープンしている(=写真)。

HOCは2001年に航空機がテロ攻撃の手段に利用された際や、2011年に福島で大規模な津波の発生後、原子炉の事態が深刻化し始めた折りに専門家が召集された部門。原発での事象発生にともない、事業者からの第1報を受けることになっており、数多くの演習や軽微な事象の発生時にも、NRC中から訓練された要員が集められるほか、原子炉反応のモニタリングや防護アクションの立案、および連邦機関や議会、メディアに至る関係者との連絡等に責任を負うスタッフ・チームが集結する拠点でもある。

新HOCの設計は大きな開放空間と、これを有効利用できることが特徴。壁面には6つのプロジェクターを配した巨大ビデオ画面がはめ込まれ、対応要員全員が地図や状況情報、経過状況、タスクのチェックリスト、ニュース報道などを同時に見ることが可能だ。

また、幹部チームに説明情報を伝える要員はウェブ・カメラとヘッドセットを装備。これにより、徒歩での移動や情報伝達時の雑音が軽減された。片や、幹部チームのメンバーは、これまで紙文書のやり取りで行ってきた情報対応を個人用PCでメールやネットを介して行える。

このほか、福島第一原発事故後に増員された連邦政府との連絡チームには一層広い部屋を確保するなど、支援チームのための空間が拡大。保障措置チームが極秘情報に関して協議する機密性の高い会議室も新たに設置しており、業務内容に合わせた効率化が図られているのが特徴となっている。


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