原子炉自然冷却に前進 日立製作所など 表面微細加工で空冷技術

日立製作所と日立GEニュークリア・エナジーは25日、電源を用いることなくBWR原子炉を長期間冷却し、放射性物質の環境への放出抑制に寄与する空冷技術を開発したと発表した。伝熱管などの表面に施すマイクロメートルサイズの微細加工技術で可能となったもので、原子炉自然冷却システムの実現に向け大きく前進した成果だ。

両社は、大規模な自然災害により、ポンプなどを駆動する電源が喪失した場合でも、原子炉を冷却可能なシステムの開発を進めている。この原子炉自然冷却システムは、原子炉停止後の崩壊熱が大きい初期は、ポンプなどを駆動する電源を用いない水冷システムで除熱し、崩壊熱の減衰後は、空気の自然循環力を用いた空冷システムのみで原子炉を冷却するものだ。また、これまで、空気による除熱性能は低く、必要な除熱性能を得るためには、システムの空冷熱交換器が大型化することが通例で、格納容器上に設置するには、コスト上も、小型化することが求められていた。今回、空冷熱交換器を構成する伝熱管などの表面に加工を施すことで、小型化することが可能となった。

開発した表面微細加工技術は、伝熱管を薬液で処理する簡易な湿式加工を用いて、ステンレス製の伝熱管などの表面に、マイクロメートルサイズの微細な凹凸を生成するもので、凹凸の部分に熱が密集し、高温の空気層が形成され、これに外気から取り入れる空気を流し入れることで、密集した熱を取り除く。

この技術により、空気による除熱性能が約2倍に向上し、原子炉の冷却に必要な伝熱管の本数を約2分の1に減少させ、空冷熱交換器の体積も約2分の1の合理的なサイズまで小型化することが可能となる。日立製作所と日立GEでは今後、モップアップ試験で効果を検証した後、実機への適用を検討していくこととしている。


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