気候学者の書簡に賛同声明 「先進的原子炉設計は一層安全」

先週号に引き続き、世界的に著名な気候科学者達が地球温暖化防止の現実的手段として一層安全な原子炉設計開発を呼びかけたのに対して、米原子力学会のA.カダック元会長(=写真)を始めとする米国の4名の学者らが発表した賛同声明を紹介する。カダック氏は来月15日から都内で始まる第47回原産年次大会でも、「気候変動対策における原子力の役割」と題する特別講演を行う予定になっている。

原子力は次に記す観点からも、十分に安全で経済的かつ確実な方法で電力を提供できる。

廃棄物の管理

運転中の原子炉から発生する核廃棄物は(1)低レベルと(2)使用済み燃料などの高レベル廃棄物に分類され、どちらも安全かつ効果的に管理中。(1)は監視付きの陸上サイトに埋設される一方、(2)については発電所サイト内の貯蔵プールか、コンクリート・キャニスター内の乾式キャスクで一時貯蔵される。

高レベル廃棄物の最終処分に関する初期の国際的なコンセンサスは地層処分を優先するということ。米国ではユッカマウンテン処分場計画が廃棄された後、ブルーリボン委員会が使用済み燃料の集中型中間貯蔵を進めることと、新たな処分場を決定するための合意プロセスに取りかかることを勧告した。スウェーデンとフィンランドではすでに地層処分のサイトを選定し、処分の詳細な設計に取りかかっているが、米国でもニューメキシコ州で国防計画から生じる超ウラン廃棄物の地層処分場が順調に運転中である。

核拡散リスク

ウラン濃縮や使用済み燃料を再処理する能力は兵器開発に利用できるため、原子力には核拡散のリスクがある。技術開発でこのリスクを低減する可能性もあり、必要な濃縮能力を大幅に制限できる改良型原子炉や兵器転用し難い物質を生成する再処理技術の開発研究が進められている。

商用原子力プログラムは核兵器開発計画の初期段階を隠蔽するのに利用できるが、現在の核兵器国による兵器開発はそれとは別個に行われてきた。また、北朝鮮のように発電炉を開発せずに核兵器開発が可能であることから、核拡散リスクは民生用原子炉の配備に異議を唱える説得力ある根拠とはならない。

CO放出のライフサイクル影響分析

COの放出という点で、様々な発電技術のライフサイクル影響に関する調査がこれまで多数行われてきた。条件を同等にして比較した場合、原子力はCOの総放出量が最も少ない部類の1つと考えられ、気候変動に関する政府間パネルのグラフでも原子力がグリーンな電力源であることが示されている。

将来展望

現在、確証済みの軽水炉技術に基づく先進的な原発が世界中で展開されつつあるが、新たに開発中の軽水炉設計では安全性とセキュリティ機能はさらに向上する。これに加えて革新的な新しい原子炉開発も進められており、そのほとんどが冷却材にヘリウムガスや溶融塩、液体金属なども用いる小型のモジュール式原子炉。固有の安全設計に基づいて、さらなる安全性改善が図られることになるだろう。(終わり)


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