処分概念の合理化に期待 日本原子力研究開発機構 加速器利用、核変換技術の取組

高レベル放射性廃棄物の処分地選定が進まぬところ、処分場面積を100分の1にまでコンパクト化できる技術の開発に日本原子力研究開発機構が取り組んでいる。放射性核種を、その半減期や利用目的に応じて分離するとともに、半減期の長い長寿命核種を、短寿命核種や非放射性核種に変換する分離変換技術だ。

原子力発電所の使用済み燃料は、再処理され、ウラン、プルトニウムを回収し、再びエネルギー資源として利用されるが、その工程で生じる高レベル放射性廃棄物に含まれる元素を、マイナーアクチノイド(ネプツニウム、アメリシウム、キュリウム)、白金族(ルテニウム、ロジウム、パラジウム)、発熱性元素(ストロンチウム、セシウム)などに群分離する。そのうち、マイナーアクチノイドは、例えば、半減期214万年のネプツニウム237を、核分裂反応で安定な核種のルテニウム102やセシウム133に核変換させ、白金族も資源として利用するなど、原子力発電で発生する「ゴミの分別・資源化・焼却」を図る。

現在、原子力機構が研究開発を進めている核変換技術の1つが、発電用サイクルから独立し、加速器駆動システム(ADS)を中心とした核変換専用サイクルを構成する「階層型」概念だ。ADSは、マイナーアクチノイドを燃料の主成分とする「MA燃料未臨界炉心」で核分裂反応を行うもので、まず、超伝導加速器で大強度の陽子を高効率で加速、陽子は核破砕ターゲットと炉心冷却材を兼ねる鉛―ビスマスに入射され、核破砕反応で大量の中性子を発生、この中性子によりマイナーアクチノイドを核分裂反応で核変換する仕組みとなっている。また、核分裂で発生する熱で発電を行い、加速器に供給するほか、電力網へ売電することも可能で、熱出力800MWの実プラント概念が検討されている。

ADSの実用化に向けてはまだ、J―PARCにおける基礎試験などを踏まえた高効率・高信頼性・低コストの大強度陽子加速器の検討を始め、多くの要素技術開発を行わねばならないが、分離変換技術の導入により、放射性廃棄物の長期リスクの低減、処分概念の合理化、資源化が期待できる。


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