建物内線量低減分析 JAEA 木造とコンクリで違い

日本原子力研究開発機構は3月25日、住宅、学校、病院など、建物の特徴を考慮したモデルに基づく線量低減計算シミュレーションから、建物の構造が内部の線量低減に与える影響に関する分析結果を発表した。

同機構では、原子力事故被災地からの住民帰還に際し、帰還後に想定される被ばく線量の予測、特に、日常生活で滞在する各種建物内の線量低減の正確な推定が重要ととらえる一方、国際原子力機関(IAEA)の文書に示されているデータが、日本とは異なる欧米の建物の調査結果に基づいていることなどを踏まえ、福島県内の建物を調査し、住宅や人々の集まる建物の特徴に応じ内部の線量を解析する技術を開発した。線量低減を評価する対象としては、代表的な27種類の建物を選定し、それぞれの用途を考慮して、内部を間仕切り、外壁に窓を配置するなど、3次元体系でモデル化し、最新のシミュレーション手法により、土壌中に沈着した放射性セシウムから放出されるガンマ線が建物に入射する様子を模擬し、部屋ごとの線量を計算した。

その結果、2階建の木造家屋では、線量低減係数(屋外と屋内の線量比)が、外壁から中心部に向かって低下しており、在来工法別の比較では、敷地面積が大きいほど線量低減係数が低くなった。また、土壌中の一定深さに沈着している放射性セシウムから放出されたガンマ線が1階へ入射する場合、2階へ入射するよりも土壌中での通過距離が長くなり、減衰するため、屋根の汚染を考慮しない場合でも、1階の方が2階よりも線量が低くなる傾向が明らかとなった。

コンクリート造の建物では、木造住宅より壁などの遮へい効果が大きいため、内部の線量はより低減しているほか、各階床の遮へい効果により、上層階に行くほど線量低減係数が低くなった。さらに、遮へい効果の小さい窓の近くで線量が高くなるエリアがあり、病院内の解析評価で、窓のある治療室と窓のないX線室との間に、線量低減係数に最大5倍の開きがあった。


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