【原子力ワンポイント】 広く利用されている放射線(27) コープふくしま陰膳調査で食の安全検証

国連科学委員会は2日、福島第一原発事故の影響について、「福島県の住民全体でみたがんの増加は確認できないほど少ない」と発表しました。これを裏付けるものとして、福島県「コープふくしま」の陰膳方式による調査結果を紹介します。

ゆりちゃん 「コープふくしま」による陰膳(かげぜん)調査って何ですか。

タクさん 陰膳というのは「もともと旅行者などその場にいない人の健康を願って、食卓のみんなと同じ食事をもう1セットつくって供える」という日本古来の風習です。コープふくしまの陰膳調査とは、普段その家で食べている食事をもう1人分、余計につくって提供してもらい、食材に含まれる放射性物質(放射性セシウム)濃度を測定し、日々の食事から受ける内部被ばく線量を予測・評価するものです。

ゆりちゃん 陰膳調査の方法を教えて下さい。

タクさん 第1回目の陰膳調査(2011年11月〜2012年4月)を例にとって説明してみましょう。調査は、福島県の5地区に居住する組合員、100家庭を対象として行われました。中通りに位置する県北地域の42家庭および県中地域38家庭、合わせて80家庭が、全体の8割を占めていました(図1)。この地域の線量が相対的に高く、「放射線の影響を実際に測定して確認したいという意識の表れ」、と考えられています。各家庭からは、2日分の食事(6食分と間食)が宅配便で検査センターに送られ、ゲルマニウム半導体検出器で放射能測定がなされます。陰膳調査は約6か月毎に1回、ほぼ同様な方法でこれまでに5回、延べ500家庭を対象として行われました。2014年度も継続して実施される計画です。

ゆりちゃん 結果はどうだったのですか。

タクさん 第1回目と第2回目の陰膳調査の結果が英国の学術誌(Journal of Radiological Protection, 33,2013)に掲載されました。この陰膳調査の期間は、2011年11月〜2012年3月と、2012年6月〜2012年9月です。調査に参加したのは県内の合計200家庭でした。放射性セシウム濃度が、1kgたり1ベクレル(ゲルマニウム検出器の検出限界値)を越えていたのは、200家庭のうち12家庭でした。最も大きな放射性セシウム濃度の食事を1年間、食べ続けたとしても、年間の内部被ばく線量は0.1ミリSv(公衆の線量限度の10分の1)を超えることはありません。コープふくしまには専門家から、「今回の論文が、科学とは縁がないと考えられている生協で行われた活動で、しかも国際的に評価が高い科学誌の論文であるという点で、大変意義深い」とのコメントが寄せられているそうです。

原産協会・人材育成部


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