郭 四志・帝京大学経済学部 大学院経済学研究科 教授

中国は原子力新興国であり、1次エネルギー消費構造における原子力の比重は0.8%と低い。現在、試運転中の炉を含め20基・約1700万kWが稼働中。建設中のものは28基・約3000万kWと世界の4割を占め、今後の目標として2015年に4000万kW、20年には7000〜8000万kWなどとする数字が提示されている。

3.11以降、安全重視の政策を取っていたため、内陸部の建設計画は一時中断したが、16年から始まる第13次5か年計画期間は原発建設拡大期であり、内陸部の建設も再開される予定である。

原発推進の背景には、石炭火力に依存するエネルギー需給構造の調整、PM2.5など大気汚染深刻化、電力需要の拡大などの理由があり、これらの解決には原子力しかないというのが中国の認識。また、地方財政における大きな収入源となっている点なども挙げられる。

さらには原子力産業をテコに国際原発市場に参入し、世界の原子力計画の受注シェアを拡大する方針。中国核工業集団公司と中国広核集団有限公司を中心に、すでにパキスタンに原子炉を輸出した実績があるほか、英国の新設計画にも積極的に参加している。

これらを足がかりに、現在、次世代の原発技術を中国の自主ブランドとして開発中で、「華龍1号」の初期設計が完成したところ。外国からの導入技術には制約があるため、単独進出するには自前のブランドが必要であり、今後は東欧やアジア、南アフリカなどに売り込んで行く計画だ。中国にはコストの安さなど、低所得の途上国に対する輸出には優位だが、技術や経験などで足りない部分もあり、安全面などを考慮すると日中韓が協働してやっていくことにメリットがあると考える。


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