J―P.ポンセレ欧州原子力産業協会 理事長

欧州における原子力の位置付けと課題について述べたい。

EU域内に現在131基が稼働し、総発電電力量の約3割を賄っているが、加盟各国にはエネルギー構成を決める権利があり、EU全体としてのコンセンサスはない。昨年10月に欧州企業10社が欧州のエネルギー政策の見直しを求めたが、背景には再生可能エネルギーへの多額の補助金が電力市場にマイナス影響を及ぼし、電気料金が4年間で17〜21%上昇したことなどがあった。

また、EUは2011年、CO排出量を90年水準に比べて80〜95%削減するとした「2050年までのエネルギー・ロードマップ」を確定。これを達成するための「原子力最大シナリオ」では、100基・140GWの新たな原子炉が必要だとしているが、大きな課題としては、安全性や廃棄物および核拡散に関する国民の理解、規制の問題、資金調達、ロシアなど外国技術への依存などが挙げられる。安全性関連では、欧州理事会が現在、EU安全指令の改定作業中。資金繰りについては、原子力への投資がし難い現在の環境下では英国の差額決済のような支援メカニズムが必要と考える。

再生エネへの補助金が年間240億ユーロに達する「ドイツ方式」のエネルギー政策では、(1)原子力の段階的廃止というイデオロギー(2)エネルギー輸入の削減(3)再工業化による雇用創出(4)温室効果ガス排出量の削減(5)ドイツを世界のモデルとして成功事例を輸出する――という優先順位を満たすことが基本。しかし、同国のエネルギー源の利用可能度を見ると、再生エネは投資額が巨額であるにも拘わらず、使えない電源であることが分かる。また、再生エネへの補助金を企業ではなく国民の電気代に転嫁している点でEUはドイツを問題視。反競争的な振る舞いと言えるだろう。


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