【原子力ワンポイント】 広く利用されている放射線(28) WBCで福島の内部被ばく低いと確認

国連科学委員会(UNSCEAR)が4月に出した「東日本大震災後の原子力発電所事故による放射線レベルと影響」報告書付属書Aで、早野東大教授等の「WBC検査による福島県内における大規模な内部被ばく調査の結果」が引用されています。

ゆりちゃん ホールボディーカウンター(WBC)って何ですか。

タクさん ホールボディーカウンターとは、体内の放射性物質(放射性セシウムなど)が出すガンマ線を測って、内部被ばくがあるかどうかを検査する装置です。しっかり遮蔽されていないと、空間のガンマ線も測定してしまいますので、早野教授等は図1のように「厚い金属の板で囲われたWBCを検査に使用しました。検査を受ける方には、この遮蔽された少し狭い空間で約2分間、静止いただき、その間に測定がなされます。この調査に使用されたWBCの検出限界値は300ベクレル/全身(セシウム134、137ともに)、実効線量に換算すると約0.02ミリシーベルト/年(自然放射線量の約100分の1)です。

ゆりちゃん 早野教授等の内部被ばく調査についてもう少し詳しく教えて下さい。

タクさん 福島県内の土壌は放射性物質(セシウム134、137)で汚染されました。福島市などの人口密集地においても、セシウム137の地表沈着密度が1平方メートルあたり約10万ベクレルの場所があり、当初、チェルノブイリ事故から得られた知見をそのままあてはめると、「住民の方々の食品由来の内部被ばくが、年に数ミリシーベルトを超える可能性」が懸念されていました。早野教授等はそのことを確かめるため、ひらた中央病院で、約3万人の福島県および近隣の住民を対象にしてWBC検査を実施しました。その結果を日本学士院紀要(2013年4月)に発表しました。それが今回、日本から発信された情報の1つとしてUNSCEAR報告書に引用されました。UNSCEARは同報告書の中で「福島県と近隣住民の大規模なWBC検査(2012年3月〜同年11月)に基づき、現在、放射性セシウムが検出されたケースは全体の1%に低減」と評価しました。一方、早野教授は、福島県および近隣住民の調査だけでは「食材に十分な注意を払った住民の自主的な要望に応えたWBC検査だから、サンプリングバイアス(被験者に偏り)がかかっている」と批評される可能性を心配しました。そのため2012年秋に、三春町の小中学校の児童生徒の全員を検査しました。その結果を表1に示します。放射性セシウムが検出された生徒はいませんでした。サンプリングバイアスのない状況で、初めて、内部被ばくが非常に低く抑えられている事実が確認されました。

原産協会・人材育成部


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