アレバ社・モックリー副社長に聞く 全社体制で生産性向上 メロックスMOX工場が優秀賞

製造業を始めとする様々なモノづくり産業ではプラントの生産性維持向上を目指した設備の管理・保全・整備・改善が共通して欠かせないが、放射性物質を扱う原子力分野のプラントでは特に、施設内のみならず、外部環境の保全や周辺住民の安全確保にまで、格別な配慮が求められる。

仏アレバ社のバックエンド部門として仏国南東部ガール県でウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を製造しているメロックス工場はこのほど、日本プラント・メンテナンス協会JIPM)からTPM(Total Productive Maintenance)優秀賞のカテゴリーAを受賞した。

生産システムの総合的効率化を目標に、トップから従業員にいたる全員が参加し、あらゆる部門でロス・ゼロを達成したプラントに贈られるという同賞受賞の背景について、訪日中だったアレバ社のドミニク・モックリー上席副社長(=写真)(=以下「副社長」)に詳細を聞いた。

―まず、MOX燃料製造業界におけるメロックス工場の位置づけと日本の原子力産業との関わりについて伺いたい。

副社長 当工場が昨年末までに製造したMOX燃料は重金属換算で2120トン以上にのぼり、仏国内のみならずドイツやスイス、米国などで稼働する40基以上の原子炉にこれを提供してきました。日本の電力会社のいくつかの原子炉にも当社製のMOX燃料が装荷された実績があります。また、日本原燃が六ヶ所村で建設中のMOX製造工場には当社の支援技術が使われています。

―TPM賞受賞に際し、貴工場が特に高く評価されたのはどういった部分か?

副社長 特に苦心したのは工場内における特定の作業環境、すなわちグローブ・ボックスや安全上の条件などです。最初のTPMプログラムでは予測された顧客の需要に応えるための生産能力向上に取り組んだのですが、品質や安全・セキュリティ、ノウハウの標準化、柔軟性、生産性などの改善を図ることが優先的になっていきました。

職場管理の基盤作りで中心となる「5つのS(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)ワークショップ」は03年末に開始しており、翌年に初めて「自主保全活動」を実施。08年末にTPMの2012年プログラムに着手することを決めました。

改善のための試験ワークショップ等を経て、09年末に集中して改善を図る10項目を確定。それらは「安全性」や「事業プロセス支援」、「環境」、「早期の機器マネジメント」などで、10年から11年の生産拡大期にそれらを実行した結果、翌12年はプラントで年間150トンという安定的な生産が得られた年となりました。

これらを受けて、私達はその年の末、こうした結果をさらに改善するとともに、TPM文化を深く根付かせるためのTPM2016年プログラムに着手。JIPMのTPM優秀賞カテゴリーAにも立候補を決めたわけです。

―貴工場が生産保全、トータルシステムの効率化向上で特に意欲的に取り組んでいる背景は?

副社長 JIPMは当工場の従業員すべてによる大がかりな取組、そして私達の得た具体的な結果を正当に評価したと思います。実際、稼働停止を伴う事象の発生件数は規則的に低減していきましたし、主要設備の稼働率は向上。廃棄物の発生量も10年から13年の間に大幅に削減されています。

また、ボトルネックとなっていた多くの機器で課題に取り組んだことが高いレベルでの稼働という結果につながりました。プラント全体に行き渡った「5S」活動により、プラントの状態が把握し易くなるなど、従業員の多くがこのメソッドの利点を認識しています。

さらに、「自主保全活動」を通じて、設備機器に対する従業員の理解が一層進展。最終的に、彼らからの提案が目に見える形での集中的な改善につながったと感じています。


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