放射線漏れで一次調査報告 米WIPP

米エネルギー省(DOE)は4月24日、ニューメキシコ州にある軍事・超ウラン元素(TRU)廃棄物深地層処分場(WIPP)の地下施設内で2月に放射線が検知された事象について、第一段階の調査報告書を公表した。調査委員会は、一個以上の廃棄物コンテナから漏れた微量のアメリシウムとプルトニウムが換気システムの設計不備により外部環境に放出され、21名の地上作業員が低レベルの内部被ばくを受けたと断定。「この事象は回避可能だった」とした上で、坑道内に再入場する調査チームが事象の発生源を特定した後、漏洩の直接原因と地下施設内での防護対策に重点を置いた補足報告書を公表するとしている。

粒子状物質が調整弁からフィルターを迂回

報告書によると、2月14日に地下655mの無人の施設内で大気の常時監視モニターが検知した放射性物質は、地上排気棟にある粒子状物質高性能(HEPA)フィルターの濾(ろ)過モジュールに誘導された。しかし、測定可能な量の放射性物質が換気システムの2つの調整弁を通ってHEPAフィルターを迂回し、排気ダクトから直接環境に放出されてしまったというもの。

閉じ込め換気システムは2008年に安全上重要な機器の指定からはずされたほか、HEPAの排気管やバイパス遮断調整弁といった地上システムの設計は原子力産業界における換気コードの要件を満たす必要が無く、構造上もHEPAフィルターや格納容器と同等の性能を有していない。

濾過されない排気の環境への通り道となるこれらの調整弁は、フィルター調整する際に閉じられていなくてはならないが、設計上の漏洩率は最大で毎分1千立方フィート。調査委員会は、2月の事象時に調整弁から漏れ出た量は連邦有害大気汚染物質排出基準(NESHAP)の一般大衆に対するガイドライン以下だったとしたほか、DOEとWIPPがサイト職員用に設置した基準も下回ったとしている。

廃棄物コンテナ破損の物理的な原因については、事故後に調査委が地下に入ることができないため、現段階で最終的な判断は下せないと説明。DOEおよびWIPPの管理操業を請け負っているニュークリア・ウェイスト・パートナーシップ(WNP)社が今後、組織的に地下施設に入るための復旧詳細計画を策定し、明確な原因を特定する。調査委は今のところ、天井部のボルトや壁の部分的崩落などがコンテナを破損し、汚染大気が放出されたと推測している。


お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで