【原子力ワンポイント】 広く利用されている放射線(29) 「個人の行動」により被ばくレベルほぼ決定

経済産業省は4月18日、「福島第一原子力発電所事故に係る個人線量の特性に関する調査」の結果をホームページで公表し、「同じ地域に住む人でも、生活パターンの違いによって、個人の被ばく線量は大きく変わる」可能性を明らかにしました。

ゆりちゃん 「場の線量」から「個々人の線量」測定へってどういう意味ですか?

タクさん 福島第一原子力発電所の事故から約3年が経過しました。高いレベルの放射線被ばくの生じる可能性があった初期の「緊急時被ばく状況」から、復興途上の状況と言える「現存被ばくの状況」へと移行した今、空間線量率すなわち「場の線量」から計算で、その地域に住む人達が受けた線量を推定する方法から、「個々人の線量」測定に基づいて、個別対応する方法への変更を期待する声が高まってきました。原子力規制委員会は2013年11月、「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方」の中で具体的に、「帰還後の住民の被ばく線量の評価は、空間線量率から推定される被ばく線量ではなく、個人線量を用いることを基本とすべき」と提言しました。この考え方は、国際放射線防護委員会(ICRP)も妥当と判断、勧告(Pub.111)で明示しています。

ゆりちゃん 「個々人の線量」測定を実際に行った実例はあるのですか。

タクさん アブダビで開催された第2回ICRP国際シンポジウム参加報告(Isotope News No718(2014))で早野教授(東京大学)の講演内容が紹介されています。早野教授は第1図を示し、「福島テレビ局(TUF)のスタッフ34名が個人線量計を1年間装着した結果、空間線量率を単純に積算すれば9ミリSv/年となるが、個人線量計の積算平均値は1.3±0.3ミリSv/年であった。しかし、実際には、平均値よりもかなり高い数値を示す人がおり、平均値だけの評価では不十分。現在は、1時間ごとに線量を記録できる個人線量計を配布し、結果を各人に丁寧に説明する取り組みを行っている。何をしているときに線量が高いのか、各人が理解して行動することが被ばく低減につながるだろう」と紹介されたそうです。これに対して、ICRP第4専門委員会のジャック・ロシャール委員長は、「被ばくレベルは“個人の行動”によって、ほぼ決定されるので、早野教授の報告されたように、個々人の被ばく線量に応じたきめ細かな対応が重要」とコメントされたそうです。国は4月1日、福島県田村市都路地区の避難指示を解除しました。まさに今、個別線量測定に基づいて、個別対応が必要なフェーズに入ったと言えます。

原産協会・人材育成部


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