米産業界、事故時の原発に非常用機器配送へ 地域対応センターの1つが完成

米国の商業用原子力発電所で事故が発生した際に、24時間以内に国内62サイトのどの発電所にも非常用バックアップ機器の配送が可能になるという地域対応センターの1つが、22日に西部アリゾナ州フェニックスの近郊で完成した。福島第一原発事故の教訓に基づき米国の原子力産業界が策定した安全戦略「FLEX」の一環となるもので、想定外の極端な事象に見舞われた発電所毎の状況に応じて、柔軟な対策が取れるバックアップ安全機器を提供。米原子力エネルギー協会(NEI)は従業員と一般公衆を守る多重の防護に新たな層が追加されたと自信を深めている。

福島第一原発事故では発電所が全電源喪失などの大きな課題に直面したことから、FLEX戦略が扱う機器は緊急時の発電所に対する炉心冷却用の水と電力の供給が目的。このため、産業界では南東部のテネシー州メンフィスと西部のフェニックスに地域対応センターを設置することを決め、各発電所常設の安全システムや配備済みのバックアップ安全機器を補完するための可搬式発電機やポンプ、標準規格連結器、ホースなどを置くこととした。

メンフィスの対応センターは来月にもオープン予定だが、両センターそれぞれにこれらすべての機器を5セット常備する計画で、4セットはいつでも発電所への配送が可能。これらはまた、常に利用可能な状態であることを確認するため、定期的に試験を実施することになる。

経費については開設時に約4000万ドルが1センター毎にかかるほか年間の運営コストが400万ドルほどだが、これらは国内の原子炉100基を操業する事業者らが共同で負担。産業界の創設した「FLEX緊急時対応のための戦略的連携(SAFER)」チームが運営に当たることになっており、30年以上も産業界で緊急時に必要な取替用機器の納入実績がある「プール用機器在庫会社(PEICO)」や、仏アレバ社の米国法人などが人員とサービスを提供する。アレバ社からは特に、緊急時対応計画とその起動、プロジェクト管理、エンジニアリング、許認可など、業界でもトップレベルのサービス提供が期待されている。


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