カザフが原発新設でロシアと協力覚書 ウラン資源背景に軽水炉建設

ロシアの原子力総合企業ロスアトム社は5月29日、カザフスタンにおける新たな原子力発電所建設協力で両国が了解覚書に調印したと発表した。カザフでは旧ソ連邦時代に建てられた電熱併給・海水脱塩用の商業高速増殖炉「BN−350」(出力15万kW)が1999年までアクタウで稼働。今後は生産量で世界第1位という豊富なウラン資源を背景に、原子力産業を一層開発していく方針で、出力30万〜120万kWのロシア型PWR(VVER)を建設するため、年内は資金調達計画に関する事項も明示した二国間協定の別途締結に向けて準備作業を進めるとしている。

ロシアの協力で原子炉を新設する計画は過去に何度か浮上していたが、今回、ロシアのV.プーチン大統領がカザフの首都アスタナでN.ナザルバエフ大統領(=写真右)と会談したのを機に具体化した。覚書にはロスアトム社のS.キリエンコ総裁とカザフの国営原子力企業カザトムプロム社(KAP)のV.シュコリニク総裁が調印。原子炉の設計、建設、起動、運転、廃止措置に関する両者の意向を取り決める内容。また、両国の産業協力枠組の中で、同原発用燃料の加工や構成部品の製造をカザフで行う可能性など、燃料供給についても協力するほか、従業員の能力向上や訓練といった部分の協力も提供される。

KAPウェブサイトによると、原発を新設する意義についてナザルバエフ大統領は、「世界レベルのウラン供給国である我が国には原子力産業を開発するすべての能力が備わっている。付加価値の高い製品を生み出せる天然ガスをエネルギー生産に使うのは資源の無駄であり、原子力こそ、その利点を我々が活用すべきクリーン・エネルギーだ」と明言。西欧では原子力の潜在的な危険性にも拘わらず多量の電力を賄っているとしたほか、日本も原子力をやめていない点などを強調した。

新設原発のサイトについては、今年4月に産業新技術省の原子力産業委員会がカザフ東部・バルハシ湖近隣のウルケン村がアスタナ東方のクルチャトフ町とともに有力だと評価した模様。ウルケンは電力の供給不足地域である一方、他地域への延長送電系統が備わっているとした。また、大統領の指示により、今年の第1四半期末までに政府が新設原発の立地点、建設のタイミングと財源等について決定することになっていたとしている。

なお、カザフのウラン鉱山開発については今回、地下資源の活用確定に向けたロードマップがカラサン1、アクダラ、および南インカイの各鉱床について策定された。カザフの有望なウラン鉱床を両国の合弁事業体がさらに開発していくための具体的方策をリストアップしたもので、10月28日までに地下資源活用契約の補足文書に調印する計画だ。

さらに、ロスアトム社とKAPは両国間の原子力平和利用協力のための包括的開発プログラムに調印。両国の原子力関連施設における事業活動に関して協力強化するのが目的で、放射線安全防護レベルの改善に向けた共同事業や部門別研究プロジェクトなどで進展を図ることになる。


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