〈Topic〉「世代間倫理」の意味 用語への依存には限界

鳥井 以前にお話しを伺った際に、放射性廃棄物の処分に関連した用語についてお考えを伺いました。まずその辺からお話しいただけますか。

 「世代間倫理」という言葉について。まず「倫理」ですが、確かに分野によって使い方が違いますし、西洋と東洋でも「倫理」の意味するところは違うでしょう。東洋の場合は、儒教的な考え方が影響し、西洋では、その国や民族によると思いますが、キリスト教の影響が強い。

核関連分野でいう「倫理」が何を指すのか。私の理解では、人類の生存権といいますか、生存環境を今の人たちが奪ってはいけない、「倫理」という言葉にはそういう意味が非常に強いように感じました。「世代間倫理」は英語でintergenera−tional ethics、それから、似た言葉に、inter−generational justiceとか、intergeneratio−nal equity、これは「公平性」といった意味ですが、そのような言葉も使われています。それらを重ね合わせると、現在を生きている世代が、未来を生きる世代、これからの人類、その生存の可能性を奪うことがあってはならないという意味内容になると思います。

未来の生存環境を悪化させることがあってはならないという基本的な、特に環境の面から提起されている問題が、「世代間倫理」という言葉に集約されていると、私なりに理解しています。

そうだとしますと、言葉と指す内容とが、ズレてとらえられる可能性があります。「世代間」「インタージェネレーショナル」が、誤解されやすい。高レベル放射性廃棄物が無害な状態になるには何万年〜何十万年という長い期間を要する。それほどの長期は「世代」という言葉で表現できないのではないでしょうか。「世代」というと、どうしても「子の世代」「孫の世代」というスパンを感じてしまいます。

「倫理」という言葉も、言葉の意味が広すぎて、一般の人がその言葉を聞いたときに、すぐに生存環境の悪化などの考えにまで思い至らない。

このような場合に留意すべきは、用語に頼りすぎ、一言で全部を表現しようとしすぎると非常に危険だということです。なかなか本当の意味が伝わらない危険性があるように思います。


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