米環境庁が温室効果ガス排出規制案 「原子力、技術的に有望」

米環境保護庁(EPA)は2日、国内で稼働する火力発電所など電力部門が同国全体の温室効果ガスの約3分の1を排出していることから、2030年までに同部門の排出量を05年水準から30%削減するという同国初のガイドライン、「クリーン電力計画」を提案した。15年6月までに最終規則として公布するため、公聴会を7月中に4か所で開催するほか、一般からのコメント募集で120日間を設定している。

これはオバマ大統領が提唱する温暖化防止行動計画の重要な一部分という位置付けで、各州や電力部門ですでに進行中の活動に基づき、それらを一層効率化する「常識的なステップ」を2030年までに実行に移すという内容。具体的にはCO排出量を05年レベルの30%分削減するほかに、粒子汚染物質や窒素酸化物、二酸化硫黄を25%以上削減する。また、エネルギーの効率化や電力システムへのデマンド軽減により電気代を約8%縮小するとしている。

これらの実行に際し、各州政府はそれぞれの状況に最も適した発電ミックスの選択など、独自の経路による目標達成プランの策定が許される。ただし、それらは2016年6月までにEPAに提出しなければならない。

原子力発電の役割

「技術的に有望なアプローチ」と形容した原子力についてEPAは、設備容量の拡大が重要だと指摘。そのための方策として、ボーグルやサマー原発サイトで建設中の5基を完成させることを挙げており、これらのうち1基以上が完成しなかった場合、立地州における温室効果ガスの削減目標達成能力に大きく影響するとの考えを示した。

また、もう1つの方法としてEPAは、既存炉の時期尚早な閉鎖を抑制することの重要性に言及。EPAのエネルギー見通しによると、今後さらに570万kWが閉鎖される可能性があるが、米国の原子力設備の6%に相当するこれらを温存すれば、規則導入期間の数年間に2億〜3億トンのCOを削減可能かもしれないと述べている。

産業界は概ね支持

EPAの提案に対して米原子力エネルギー協会(NEI)のR.マイヤーズ副理事長は、「米国の半数以上の州で原子力発電所は最大の低炭素電源になっている」と指摘。CO排出量の削減に真摯に取り組むのであれば、原子力発電所の維持と利用拡大が必要だと認めねばならないのは疑いようもないとした。

また、いかなる温室効果ガス削減戦略を取るにせよ、すべての州において極めて明確な点は、オバマ政権の目標達成には原子力が有効であること、また、原子力なくしてその達成可能性はゼロということだと明言している。


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