原子力設備容量に上限設定 仏担当相がエネルギー移行法案

仏国エコロジー・持続可能開発・エネルギー省のS.ロワイヤル大臣は18日、2050年までの長期的なエネルギー政策を展望した同国の新たなエネルギー・モデルとなる「エネルギー移行法案」の概要を内閣に提案した。F.オランド大統領が公約した「2025年までに原子力発電シェアを50%まで削減する」方策として、エネルギー源を多様化するとともに、原子力の設備容量を現状レベルの6320万kWに制限するなどのアクションを提示。今後は関係機関が審議した上で、2015年初頭の発効を目指して7月にも議会に提出する計画だ。

ロワイヤル大臣が提案した新しいエネルギー・モデルでは、地球温暖化防止と仏国内のエネルギー消費量削減が主要な目的であり、国民や産業界、国などによる共同アクションの枠組、および中長期的目標として次の5点を明示。すなわち、(1)温室効果ガスの排出量を2030年までに90年比で4割削減するというEUの目標に貢献(2)30年までに化石燃料消費量を3割削減(3)25年までに原子力発電シェアを50%まで削減(4)30年までに再生可能エネルギーの発電シェアを40%に増加(5)最終エネルギー消費量を50年までに半減――である。

原子力の項目では安全性、および国民への情報開示の強化がポイントとなる。このため、仏原子力安全規制当局(ASN)による管理原則としてまず、(1)事業者による一義的責任(2)安全性改善の継続(3)ASNの独立性(4)透明性と国民への情報開示――を列挙。その上で、高度な違反を犯した事業者への処罰権限をASNに与えることや、地元に情報公開用委員会を設置するなどの具体的アクションを提示している。

原子力発電シェアの削減については、閉鎖させる原発名を特定していない一方、総設備容量に6320万kWという上限を設けると提案。このため国内の原子炉58基すべてを操業している仏電力(EDF)では、5年毎に区切った複数年プログラムの中で発電設備の調整戦略を策定し、議会審議にかけなければならなくなる。

オランド大統領は当選当時、仏国最古のフェッセンハイム原発(PWR2基、各92万kW)を16年末までに閉鎖すると表明。設備容量を現状レベルに制限した場合、仏国初の欧州加圧水型炉(EPR)として建設中のフラマンビル3号機(163万kW)と引き替えに、フェッセンハイムの2基が閉鎖されると産業界では予想している。


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