原型炉の建設活動勧告 米GAOが次世代炉研究で調査

高温ガス炉(HTGR)など米国における次世代原子炉の研究開発について調査していた米国政府監査院(GAO)は6月23日、「次世代原子力プラント(NGNP)」プロジェクトの下で原型炉建設プランの再開に向けた戦略を練るよう米エネルギー省(DOE)に勧告する報告書を公表した。2021会計年度末までに原型炉を開発するという同プロジェクトの目標達成を断念した原因が産業界とのコスト分担問題であったことから、これを解決するアクションが必要だと言明している。

GAOは連邦議会の要請に基づき、政府機関の財務検査や政策プログラムの評価を通じて予算の執行状況を監査する機関。今回はDOE原子力局(NE)による先進的な原子炉設計の研究開発活動に関して、そのアプローチ手法と優先対象の決め方などを審査した。NEのアプローチでは対象技術を(1)HTGR(2)ナトリウム冷却高速炉(3)溶融塩冷却高速炉――に絞る一方で、その他の新型原子炉技術にも予算を提供。産業界や学会などと協同で複数の原子炉技術研究を支援し、その成果を産業界のために次のステップである建設と商業化につなげるのが究極の目標となっていた。

こうしたアプローチは米国の将来的なエネルギー政策の変更に対応可能という柔軟性が評価される一方で、DOEの原子力諮問委員会からは「原型炉建設を保証するために対象技術の数を絞るべきだ」との批判があった。NEは資金提供する優先順位やプログラムを設定する際、内外の審査記録を活用。支援技術の中でもHTGRは短期的に建設・商業化に移行する可能性が最も高く、NEは2005年エネルギー政策法に基づくNGNPプロジェクトの下で同技術の研究開発を推進していた。

しかし、DOEはいくつかの問題点を理由に同技術を原型炉の設置段階に進めないことを2011年に決定。例として、NEと産業界の間のコスト分担レベルや、コスト分担すべき段階や特定の活動といった点で両者が合意に至らなかったことを挙げた。NEはその後もNGNPプロジェクトの研究開発を継続するも、設置段階を再始動させるのに必要な課題克服戦略を策定していない。

こうした現状からGAOは、NGNPの原型炉建設というエネルギー政策法が課した要件を満たす準備として、初期設計のパラメータ選定、あるいは選定予定スケジュールについて議会に報告すべきであるとDOEに勧告。同報告書はその際、課題点に関する最新情報、プロジェクトの第2段階への移行を阻むその他の課題の概要を含めるべきだとした。具体的には(1)官民パートナーシップの構築状況(2)再開の正当化条件を含めたプロジェクト戦略(3)サイト選定やコスト分担といった課題への取り組みにおける必要に応じた法案提出――を挙げている。


お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで