英政府が新設計画の投資額評価 20年までに最大約2兆円

英エネルギー気候変動省(DECC)は17日、同国のエネルギー部門の投資について包括的に評価するとともに、今後数年間から数十年間の投資課題を詳細に調査した初の報告書を発表した。原子力発電分野については、現時点で英国の総発電電力量の約20%を賄う既存原子炉が運転寿命を迎えつつあることから、これらをリプレースする新たな一群の原子炉が必要となる点を強調。政府の電力市場改革計画の下で、2014年から20年までにこの分野に投入される資金は100億〜120億ポンド(約1兆7千億〜2兆円)にのぼるとの試算結果を明らかにしている。

報告書によると、DECCはあらゆるエネルギー部門と技術について、発展状況や強み、設備容量と雇用者数、および2020年までとそれ以降に投資が供給される機会について検証した。

英国はEU諸国の中でエネルギー供給が最も保証された国だと格付けされる一方、現政権はエネルギー部門全般にわたり将来的なエネルギー供給上、大きな課題を引き継いでいると指摘。エネルギー・インフラに対する歴史的な過小投資に関しては、原子力を含めた1次エネルギー源から電力インフラに至るまで、状況が好転しつつあるとした。

原子力関連の記述は以下の通りとなっている。

英国では、原子力は規制の枠組がしっかりしており、潜在的に低炭素な電力を供給できるとの認識。電力市場は20年以上も前に建設された既存炉の運転状況に影響されてきたが、低炭素電源への投資促進システムを盛り込んだ市場改革により、新しい世代の原子炉から恩恵を得られることになる。産業界は2030年までに1600万kW分の原子炉新設を計画中で、これらは国の新たなインフラ建設の重要計画と位置付けられている。

昨年、政府は1995年以来初めて、ヒンクリーポイントでの原子力発電所建設計画に開発合意書を発給するとともに、関連投資契約の主要項目に同意。160億ポンドの投資で320万kWの発電設備を開発するという同計画は、低炭素電源による電力の7%を賄うほか、2万5000人分の雇用を支える。事業者のEDFによれば年間4000万ポンドが地元経済に投入され、操業終了時までの総額は20億ポンドを超える計算だ。

また、12年に買収したホライズン社を通じて日立製作所はウィルファとオールドベリーの両サイトで原子炉新設を計画。総投資額は約200億ポンドと見積もられており、ウィルファでは20年代前半にも発電を開始する。この時期に確保される雇用はサイト毎に約1000人分となる見通し。

さらに、東芝とGDFスエズ社は今年5月、ムーアサイドにおける原発新設計画を進めるため、2億ポンドを投入すると約束。同計画は建設期間に100億ポンドの投資を英国にもたらし、2万1000人分の雇用を生み出すことになるだろう。


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