宇宙線ミュオンによる技術も IRIDシンポ 燃料デブリ取出しの研究開発

国際廃炉研究開発機構(IRID)は18日、間もなく設立から1周年を迎えるに当たり、これまで取り組んできた廃炉対策に係る研究開発について紹介するシンポジウムを都内ホールで開催した(本紙既報)。現在、福島第一原子力発電所では、使用済み燃料プールからの燃料取り出しが進められているが、シンポジウムでは、これに続いて20年度上半期からを見込んでいる燃料デブリ取り出しに関する研究開発について報告があった。

今回、1979年のTMI事故の際、初期対応で米国原子力規制委員会として直接関与した経験のあるレイク・バレット氏(=写真)が招かれ、特別講演の中で、安全にクリーンアップすることは「福島第一でも可能」と明言し、IRIDの活動に期待をかけた。

福島第一の燃料デブリ取り出し準備に係る研究開発について報告を行ったIRID研究推進部長の鈴木俊一氏は、最終目標の「原子炉建屋から燃料を取り出すこと」に向け、その手順は、水素爆発による損傷、容器底部の制御棒駆動機構を伴う複雑な構造などから、TMIの場合よりはるかに複雑になるが、TMIの経験は有効に活用しうるとしている。

同氏は、燃料デブリ取り出し準備に係る研究開発として、「原子炉建屋内の遠隔除染技術」、「原子炉格納容器水張りに向けた調査・補修(止水)技術」、「格納容器内部調査技術」、「圧力容器内部調査技術」、「燃料デブリ・炉内構造物取り出し技術」、「燃料デブリ収納・移送・保管技術」、「圧力容器/格納容器の健全性評価技術」、「燃料デブリの臨界管理技術」、「事故進展解析技術の高度化による炉内状況把握」、「原子炉内燃料デブリ検知技術」、「模擬デブリを用いた特性の把握、デブリ処置技術」の各プロジェクトについて紹介した。

その中で、「原子炉内燃料デブリ検知技術」は、圧力容器内と格納容器下部の燃料デブリの位置・量の把握、燃料集合体の損傷状態、狭あい部への溶融燃料の流れ込み有無、燃料デブリの密度の詳細分布が、手順・工法の具体化に向け重要だが、圧力容器内部は高放射線場でアクセスが困難なため、宇宙線ミュオンを利用し、透視技術で早期に燃料デブリ分布に関する情報を廃炉技術開発に提供しようというものだ。

ミュオン観測技術には、測定対象に対するそれぞれ透過割合、散乱角を測定する透過法と散乱法があり、識別能力は、1つの小型ミュオン検出器で早期に適用が可能な透過法で1m程度なのに対し、散乱法では30cm程度と高まり、ウランなどの重元素も識別可能だが、2つの大型ミュオン検出器を開発せねばならない。

透過法では既に、日本原子力発電の東海第二発電所で測定実績がある。一方、散乱法では、研究炉でのウラン識別試験を踏まえ、福島第一2号機実規模体系の数値シミュレーションが実施されており、識別能力に目処がついているところだ。

鈴木氏は、燃料デブリ取り出しに関する研究開発報告の結びとして、福島第一においては、TMIと比較し一層の困難が予想されることから、作業の全体戦略、取り出し工法、デブリ取り出しツールの開発について、国内外の英知を結集する必要があり、また、エンド・ステート(最終的にどうしたいか)を考え、実現可能な様々なオプションを検討しておくことが重要だとしている。


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