リトアニアと日立が原発新設で協議再開 9月中に事業会社の設立計画

日立製作所は7月30日、リトアニア内に建設が計画されているビサギナス原子力発電所プロジェクトの推進に向け、事業会社(PCO)の設立に関する協議を開始することで同国エネルギー省と合意したと発表した。両者は9月末までにPCOの機能や組織等の詳細を詰めた設立計画を立案し、プロジェクト参加国であるバルト三国のエネルギー公社に提示するなど、PCO設立準備委員会の設置を促す段取りだ。日立が出力135万kWのABWR輸出を想定するこの大型プロジェクトは2012年の国民投票結果を受けて凍結されていたが、経済性などの諸条件が改善されたことにより、2020年代の運転開始を目標にようやく動き出した。

日立は2011年7月、同プロジェクトに対する出資を伴う受注優先交渉権を取得。翌12年6月にはリトアニア国会が、同社を20%出資の戦略的投資家に選定するとともにABWR技術での計画推進を認める内容の法案を承認した。しかし、同年10月に発足した現政権は173億リタス(約5173億円)と言われる建設コストが国内経済に及ぼす悪影響を懸念。国会議員選挙と同じ日に行われた国民投票でも投票者の約63%が建設に反対票を投じたことから、同プロジェクトの競争力が改善されない限り推進を凍結するとの判断を下していた。

今回、リトアニア政府が日立と合意した覚書によると、その後の状況は徐々に変化。今年3月にリトアニアの全政党は戦略的なエネルギー・インフラ計画の中でも特に、同プロジェクトを可能な限り早急に完成させることで合意した。背景には2月以降、ウクライナでロシアからの天然ガス輸入を巡る紛争が再燃し、同様にロシアからのエネルギー輸入に依存するリトアニアでもエネルギー供給保障上の危機感増大があったと見られている。

また、プロジェクトの競争力改善手段を探るよう昨年10月にエネルギー省に命じた結果、いくつかの点で具体的かつ建設的な結果が得られたとリトアニア政府は指摘。すなわち、(1)日本の輸出信用機関による支援も含めて日立から資金調達条件を改善する提案があった(2)バルト三国をEUの電力市場に統合するための実行可能性調査で、相互接続が可能であり新設原発とも互換性があると判明した(3)プロジェクトの経済性評価について三国のエネルギー公社と日立が共同で提示した質問に対してリトアニア政府が回答書を提出した――である。

これらを踏まえた上で、プロジェクトの完成度を保証するとともに競争力と実施条件を改善するためにPCOが設立されることになると同国政府は説明している。


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