輸出入銀行、9月末に閉鎖の危機 米国

近年、原子炉の国際市場で輸出契約を獲得する際、特に途上国における入札案件では政府系輸出信用機関による低金利融資が欠かせない支援手段の一つとなっている。米国では連邦政府の設立した輸出入銀行(EX―IM)が議会の認可により米国企業の輸出に対する資金提供業務を遂行。しかし、9月末を期限とする現行認可の再承認手続きを巡って、保守的なイデオロギー団体や米商工会議所、全米製造業者協会(NAM)、および連邦議員などの間で議論が激しく紛糾中だ。

EX―IMの廃止を求めているのは主に議会下院の共和党議員で、金融サービス委員会のJ.ヘンサーリング委員長は、「EX―IMによる国庫からの持ち出し金が納税者に返還されておらず、米国民の税金が中国やロシア、サウジといった外国の政府事業や企業を支援するために使われている」などのデメリットを指摘。これに対して同委の6月の公聴会では、米原子力エネルギー協会(NEI)のM.ファーテル理事長兼CEOが米国企業の原子力輸出を促進するためにEX―IMの再認可を強く訴える供述書を提出している。

同様の見解は個別の企業からも出始めており、7月にウクライナから使用済み燃料集中貯蔵施設を受注したホルテック・インターナショナル社は同月28日、EX―IMが果たす重要な役割を議会に訴える文書をウェスチングハウス(WH)社、およびNAMと連名で公表した。

これはNAMが両社の幹部を招いて開催した討論会の概要をまとめたもので、同社はまず集中貯蔵施設の設計・建設にあたりEX―IMの支援が必要なこと、このプロジェクトにより米国の2州で約200人分の雇用が創出されるとの見通しに言及。EX―IMは同プロジェクトの資金調達で唯一利用可能な融資保証機関であり、政府の対外政策における有用な手段と同社が認識していることを強調した。

WH社も「これは党利問題ではなく米国の競争力に係わる問題だ」と指摘しており、政府から資金援助や助成を受けている外国企業と競合していくにはEX―IMが絶対に必要不可欠だと主張。だからこそ、商務省が7400億ドルと見積もった世界の原子力市場で同社が事業チャンスを追求しているのだと訴えた。

NEIの見解

この関連で、オバマ大統領は昨年6月、気候変動対策の一環として国外での石炭火力発電所建設に対するEX―IM支援を停止したが、一部のメディアは「EX―IMの再認可がこうした政策の効果を骨抜きにすれば、経済や環境、外国のエネルギー・ミックスにまで影響が及びかねない」と論評。これに対してNEIのファーテル理事長は次のようなコメントを7月に発表している。

米国の原子炉供給業者が大規模入札で勝利すれば、その後の燃料・機器、サービスの供給などで数十年単位の連携関係が構築される。大まかな計算では、10億ドルの原子力輸出1件につき5000〜1万人の雇用が米国内で創出されるため、世界の原子力市場の25%を米国企業が押さえれば、その数は18万5000人分に達する。EX―IMによる継続支援がなければ、このような経済成長と雇用創出すべてが危険にさらされるだろう。

また、ロシアが7月にアルゼンチンと協議した際は、国の総合原子力企業であるロスアトム社が十分な財政支援条件を提示しつつ原子炉の建設を提案した。国際競争に打ち勝ち、国内経済を成長させていくには、EX―IMの融資や信用保証で米国の商業的、戦略的利益の追求に向けた民間融資へのテコ入れが必要。議会や政権も、世界の原子力市場で米国企業の競争力を増強するための政策やプログラムを支援していくべきだ。


お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで