「安全に稼働」を法に明記 21世紀政策研 規制最適化で提言

日本経済団体連合会のシンクタンク「21世紀政策研究所」は8月28日、法改正を視野に入れた原子力安全規制の最適化を考える報告書を発表し、合わせて、有識者から意見を求めるシンポジウム(=写真)を、東京・大手町の経団連会館で開催した。

報告書は冒頭、原子力規制委員会と事業者との間に生じている「リスクゼロ」を求める世論への過剰な意識、審査期間の長期化と終了時期の不透明化が介在する「規制活動の悪循環」を指摘した上で、政府により原子力発電再稼働の方針が示されている現在、「安全に動かすこと」に原子炉等規制法の目的があることを明確にしていく必要を訴えている。

その上で、規制側に対しては、規制活動基本原則の再構築、規制プロセス・手続きの法令化、外部知見の取入れと意思決定プロセスの整備、一方、事業者側に対しては、安全性向上評価の実効化、ピア・レビューシステムの適切な設計、ステークホルダーとの対話に関して、それぞれ求められる取組を提言している。その中で、現在の原子力規制委員会の姿勢を、「外部からのインプットを拒んでいる」などと批判した上で、40年運転制限制や地震・断層問題について例示しながら、同委のもとに設置されている原子炉安全専門審査会による専門技術的なレビュー、事業者や第三者研究機関との真剣な技術的検討作業が行われるべきと述べている。

これらの問題点を踏まえ、本報告書は、対象を原子力発電所に絞り、原子炉等規制法改正案として、まず、「電力安定供給のために投資された経済的資産を有効に活用するため安全に稼働すること」と目的を明確にした上で、そのための合理的な規制活動が体系化されるよう、「定量的安全目標の取入れとPRAの活用」、「バックフィットの手続きの明確化」、「審査基準等の文書化・明確化」、「原子炉安全専門審査会の権限強化」などを条文化し提案している。

シンポジウムでは、報告書取りまとめに当たった同研究所研究主幹の澤昭裕氏による説明を受け、尾本彰氏(東京工業大学特任教授)、櫻井敬子氏(学習院大学教授)、佐々木宜彦氏(電力土木技術協会会長)、山口彰氏(大阪大学教授)らをパネリストに迎え討論を行い、規制機関の独立性、安全目標、コミュニケーションのあり方などについて意見が交わされた。


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