HTTRによる技術保持・人材育成を 高温ガス炉 今後の進め方を示す中間報告

新たなエネルギー基本計画では、「水素製造を含めた多様な産業利用が見込まれ、固有の安全性を有する高温ガス炉など、安全性の高度化に貢献する原子力技術の研究開発を国際協力の下で推進する」とされている。また、8月末にまとめられた文部科学省の15年度概算要求では、「原子力の基礎基盤研究とそれを支える人材育成」との名目のもと、高温ガス炉とこれによる水素製造技術の研究開発で、14年度予算額から大幅増となる16億円が計上され、高温工学試験研究炉HTTR(=写真上)の「運転再開を実現させる」こととしている。

このような中、文科省の原子力科学技術委員会に置かれた専門家会合がこのほど、「高温ガス炉技術開発に係る今後の研究開発の進め方について」と題する中間報告を取りまとめた。その中で、HTTRの活用について打ち出している「技術の保持・人材育成のための取組」の箇所をピックアップして紹介する。

【わが国の優れた技術の保持に向けた取組】

・わが国は、原子力機構におけるHTTR等を用いた研究開発や、原子力機構と民間企業が協力した燃料、材料(黒鉛、金属)、高温機器等の研究開発により、国際競争力の観点から、極めて高度な高温ガス炉に関する国産技術を蓄積している。特に、民間企業におけるこれらの優れた技術の蓄積は、原子力機構が高温ガス炉技術の研究開発を民間と連携して実施してきたことに大きく起因していると言える。

・一方、わが国初の高温ガス炉試験研究炉であるHTTRは、わが国に存在する唯一の高温ガス炉システムであり、平成3年にHTTRが建設工事着工、平成10年に初臨界(=写真下)を迎えて以来、新たな高温ガス炉システムは製造・建設されていない。また、高温ガス炉の燃料についても2次燃料の製造以来、現在に至るまで製造は行われていない。

・わが国は世界的に見ても優れた高温ガス炉の研究開発実績を持っているものの、現在の状況が長く続く場合、特に民間企業による製造技術の継承が困難となる。また、現在、大学等における高温ガス炉の研究開発は必ずしも活発であるとは言えない。このような状況の中で、わが国の優れた技術を保持し、今後の実用化や国際展開につなげるためには、早期の原子力機構におけるHTTR改造やリードプラントの基本設計を含む高温ガス炉技術の研究開発の着実な推進はもちろん、民間との連携や大学等とのアカデミアにおける高温ガス炉研究開発への参画が求められる。

【研究開発・国際協力を通じた人材育成・確保のあり方】

・これまで、高温ガス炉に関する取組は原子力機構を中心に行われてきたが、将来的な高温ガス炉の実用化に向けては、民間、アカデミアにおける人材の育成・確保が必要である。

・具体的には、わが国で唯一の高温ガス炉であるHTTRを人材育成の場として活用することにより、原子力機構の研究者、技術者のみならず、教育分野における学生等に、高温ガス炉に関連する技術を広めるとともに、HTTRを用いて様々な試験運転を行い、これらの試験を通して、高温ガス炉の優れた安全性に関する知識を習得させることにより人材を確保する。

・また、アカデミアにおける高温ガス炉の研究者の裾野を広げる取組や、原子力機構と連携した取組等、活動の拡大・多様化が必要である。

・さらに、原子力機構を中心として実施しているもしくは今後実施する予定の研究開発に民間企業の研究者、技術者が参加することにより、民間における高温ガス炉技術の継承を促進させる。

・将来、高温ガス炉の輸出を考える場合、国際協力の下、海外の研究者、技術者、ステークホルダー等をHTTRに受け入れて、高温ガス炉技術の理解促進を図り、優秀な研究者、技術者を育成するとともに、帰国後に自国における高温ガス炉プロジェクトの中心的役割を担う人材を育成することも、今後の海外展開を推進する上で非常に重要と考える。


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