「ウラン需要、今後も増加」 NEAとIAEAのレッドブック

経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)と国際原子力機関(IAEA)が隔年で作成している報告書「ウラニウム:資源と生産および需要(通称=レッド・ブック)」の最新版が9月10日付けで刊行された。第25版目となる2014年版は2013年1月1日現在の世界のウラン需給状況についてとりまとめるとともに、将来見通しについても分析。「福島第一原発事故後の市場価格低下や世界的な経済不況による電力需要の低下にも係わらず、ウランの需要は予測し得る将来において増加し続ける」との結論を導き出している。

供給生産量が堅調に増大

レッド・ブックによると、世界ではウランの供給・探査・生産量が増大しており、世界の既知資源量は合計で763万5200トンUに到達。これは2011年1月以降、7.6%の増加であり、世界全体の原子力発電所で必要とする既存のウラン資源ベースに約10年分が追加された形だ。12年にウラン探査と鉱山開発に使われた総経費が23%増の19億2000万ドルになったことから、10年から12年の間にウラン生産量は、その前の2年間と比べて低率ではあっても継続して増大しているとした。

一方、需要量についてレッド・ブックは地域によって異なると予測。福島第一原発事故を契機にいくつかの国でエネルギー政策の変更があったものの、原子力発電設備は東アジアと欧州大陸の非EU諸国を中心に拡大し続けるとの見通しを示した。2035年までに低ケースで4億kW(ネット)、高ケースで6億8000万kWに達する見込みで、成長率はそれぞれ7%と82%。この数値はIAEAが最近、2030年までの予測として明示した「8%〜88%の増加」という数値とも符号しており、原子力発電所の所要量としては7万2000トンU〜12万2000トンUになる計算だ。

原子力、拡大するが競争力は低下

いくつかの先進国では世界的な財政危機に端を発した電力需要の低下傾向が見られるが、発展途上国での人口増加にともなう必要性を満たすため、世界全体の需要は今後数十年間にわたって増え続けるとレッド・ブックは分析。原子力発電は競争力のある価格で温室効果ガスを出さない、エネルギー供給保障にも資するベースロード用電力を供給できることから、今後も重要なエネルギー供給源であり続けることが予測されるとした。

しかし、いくつかの国では原子力に対する国民の信頼が損なわれ、原子力発電設備の成長予測も一転して減少に。これまでよりも大きな不確実性にさらされるとしており、原子力発電施設をすべて審査した後に課された追加の安全対策により、運転コストもまた上昇するとの認識を示した。これに加えて、北米で豊富に存在する低価格な天然ガス、世界的財政危機に起因する危険回避的な投資環境により、自由化された電力市場における原発の競争力は低下していくと明言している。

それでも、電力需要の拡大やクリーンな発電への必要性から原子力は規制された電力市場で今後も大幅に拡大。レッド・ブックとしては、予見し得る将来で原子力発電所での所要量を適切に満たせる以上のウラン資源量を保証しており、必要な量をタイムリーに市場にもたらせるよう、安全かつ環境に優しい手法でウランを採鉱し続けることが課題になると締めくくった。


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