ECが英国のヒンクリーポイントC計画を承認 支援策はEU競争法に適合

欧州委員会(EC)は8日、EDFエナジー社のヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所建設計画に対する英国政府の財政支援策はEU競争法の国家援助規則に適合するとの判断を下した。1年間に及んだ徹底的な審査の結果、同原発から得られる収益を英国の消費者に還元するメカニズムの強化など、EDF社と英国政府が合意していた長期的な投資契約項目の一部修正版を承認したもの。英国で二十数年ぶりとなる一連の新設計画で先駆けの2基が大きなハードルをクリアしたというだけでなく、日立と東芝が同国で出資する後続計画のためにも資金調達に関する良い先例を作ったという意味でその意義は計り知れない。

EDF社は英国・南西部のサマセット州で出力165万kWの仏アレバ社製・欧州加圧水型炉(EPR)を2基、2023年以降に運開させていく計画を進めている。同計画の投資リスクを軽減するため、昨年10月に英国政府と商業合意に達した投資契約上の主要項目では、HPCの発電電力1000kWhあたり92.5ポンド(約1万6000円)(後続のサイズウェルC計画の実行が確定した場合は89.5ポンド)を固定買い取り(行使)価格に設定。市場の卸売価格がこれを上回ればEDF社が差額を、下回れば政府が支払うという差金決済取引(CfD)を35年に渡って適用。また、政府の信用保証制度である「UKギャランティ」をHPC計画に適用し、総工費の65%を保証するとしていた。

これに関してECは、これらの項目がEU競争法に規定された「EUの単一市場と両立しない違法行為」の国家援助に当たるかを、(1)国家財源の移転がある(2)一定の事業者に優位を与える(3)競争を歪める恐れがある(4)加盟国間の貿易に影響を与える――の4点について詳細かつ厳密に審査。ECが介入したことで、同支援策による単一市場の競争原理への過度の歪みを抑え、英国民にとっても大幅な負担軽減につながるよう修正が加えられたとしている。

具体的には、政府保証適用のための保証料を大幅に引き上げることで補助金を10億ポンド以上削減する。同計画の株主資本利益率が予想率を超えた場合、超過分を支援担当の公共組織と分け合う。また、第二の、より高い閾(しきい)値を利益率に設け、これを超えた利益の半分を同公共組織が手にし、行使価格として事業者に支払った対価の削減という形で消費者に還元。こうした仕組みは同原発の運転期間である60年間適用される。さらに、建設費が予想よりも低いと判明した場合の利益も共有されることになる――である。

ECによると、HPC計画では170億ポンド(約2兆9000億円)の負債融資が必要で、最終的な資本金は340億ポンド。建設コストは245億ポンドになると見積もっている。

◇  ◇  ◇

事業者のEDFエナジー社は同日、コメントを発表。消費者と利益を共有する仕組みを修正したものの、以下の項目については変更が無かった点を強調した。すなわち、(1)CfD上の行使価格(2)35年というCfD適用期間(3)行使価格は消費者物価指数によりインフレと全面的に連動(4)同建設計画は法制の変更に影響されない――だ。

また、建設計画の確定までに残されたハードルとして、最終投資決定に関する戦略的金融パートナーとの合意のほかに、廃棄物移送契約の手配に関するECや担当相の承認が必要であることを明らかにした。


お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで