安全審査の手順見直し ベルギーの2基の再稼働で

2012年6月に圧力容器からヒビの兆候が検知されたベルギーのドール原子力発電所3号機とチアンジュ原子力発電所(=写真)2号機の本格的な運転再開に向けて、同国の連邦原子力規制局(FANC)とその技術評価組織であるBelV社は10月29日、2段階の安全性審査プロセスの概要を発表した。

これまでに実施した検査の暫定結果で「専門家が予見し得ない結果」が出たことから、事業者であるエレクトラベル社が安全性報告書の作成に当たり、テスト結果を解釈するために提示した方法論の妥当性をまず規制当局側が審査。その結論次第で同報告書自体を審査対象とすべきかを両者が協議するとしている。

両炉の圧力容器母材に毛状ヒビが検知された原因として、FANCは鍛造時に材料中の元素組成に偏りが生じ、水素が集まって発生した「白点」の存在を指摘。昨年2月に、再起動前の11要件と再起動後の5要件を満たすようエレクトラベル社に指示した後、「安全な再稼働のために要求した11要件は満たされた」として昨年5月に両炉の運転再開を承認した。

しかし、水素白点のある圧力容器母材の試料に強い放射線を照射し、その後に機械的耐性試験を行ったところ、理論モデルよりも強く放射線の影響を受けるとの暫定結果が出た。このためエレクトラベル社は、停止日程を前倒しして今年の3月から両炉で第2シリーズの試験を開始するとともに、その結果分析の完了までには数か月かかるとの見通しを6月に表明。また、今年の夏からは第1、第2シリーズの試験の暫定結果を確認するため、第3シリーズの試験を開始していた。

なお、FANCは規制当局としての結果分析を統合するため、これらの試験から得られる情報を国外の科学者を交えた国際審査小委員会に提出する予定。同委の構成委員8名はFANCが指名済みで、水素白点によるヒビの入った母材物質の機械特性に放射線が及ぼす影響についてエレクトラベル社が出した仮説の妥当性などを審査する。同委はまた、この目的のために、一連の試験で得られた未加工の結果と予見できなかった暫定結果に対する同社の解釈についても考察する予定だが、その審査に際しては、電離放射線科学審議会がオブザーバーとして作業を監視するとしている。


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