遠藤智 広野町長に聞く 幸せな住民の帰町に全力 駅東側開発 町づくりの起爆剤に期待

気候が温暖で、みかん栽培の北限地としても知られる広野町は、現在住民の幸せな帰町にむけて復興・再生への取り組みが進んでいる。その陣頭に立つ遠藤智(さとし)町長に、取組みの現状と今後の展望を聞いた。

▽ふるさと復興希望の年

現在、町には2500名と約半数の住民が帰町し、福島第一原子力発電所の事故収束に携わる関係者約3000名が町内に滞在している。

「平成26年を『ふるさと復興希望の年』として住民の帰還・復興に全力で取り組んでいます」と話す。

「復興への道のりにむけ、新たな共生、新たな時代を培っていくなかで原子力、火力というエネルギー立地地域、町である広野町の新たな町づくりを考案、創造しつつ私たちの願う幸せな帰町、復興というものをなしとげたい」と力を込める。

▽企業等の誘致に努力

駅の東側に展開する開発区域を中心に、今後産業を誘致し雇用を生み出す施策は当面の重要課題となる。税制優遇や雇用創造に応じた補助制度などを用意し、10月に初めて同地域に参入する2社が決定したところ。

「産業団地として、いまひとつひとつ誘致を進めています。この後の第2期(の募集)にわたって、町の機能を整えていく途上にあります」。

鉄道は今年6月に竜田駅まで復旧、国道6号線は9月15日に全線開通し、高速道路(常磐道)が来年の連休明けには開放する予定。交通インフラの整備が着々と進むなか、「新たな町づくりにむけて、製造業を含む様々な企業に来ていただき、この広野駅を拠点とするビジネスと生活に必要なインフラ整備も進めていきたいと考えています」と先を見据える。

▽人づくりで未来をひらく

人づくりは町の持続的な発展に欠かせない。遠藤町長は教育環境の面をとりわけ重視する。「子どもたちの健やかな成長なしに私たちの願いはなしとげられませんから」とその覚悟を示す。広野教育ビジョンをとりまとめ、基礎学力を確かなものとし、子どもたちのメンタルにも配慮を忘れない。語学教育には力を入れており、幼稚園から中学まで途切れなく英語のプログラムを用意、英国から語学指導助手を招き、生の英語にふれる機会を作った。

さらに、「来春以降、中高一貫校として県立のふたば未来学園高等学校に新入生120名を迎えます。確かな学習環境の整備がはかられており、その半数は町内の寮から通います。広野町の子どもとして中学から高校まで守り育てていきたいという思いです」。

東北に春を告げるまちとして、いわき市に隣接する地の利からしても、広域的な復興に果たす広野町の役割は大きい。

「広野町は当初から廃炉、汚染水の取組みにおける最前線としての役割を担ってきましたが、事故の収束に携わる方々など郡内では1万4000名の方々が経済活動をしています。広野火力の増設も予定されており、未来への確かな展望を描かなければならないと思っています」。

▽先を見据えた復興・再生のビジョン

遠藤町長は、広野町の役割について(1)廃炉等の事業の拠点(2)中高一貫校の開校など確かな学習環境の整備による人づくりの役割(3)帰還する住民への対応の3点をあげ、広域的な連携による復興・再生に果たす広野町の役割を見据え「広野町に求められる役割を積極的に果たしたいと考えています」とする。

同時に「情報発信も重要と考えています。駅前の開発により、上野から水戸、いわき、そして福島第一へと人の移動があり、そこで経済が動いていく。そこには現地からの情報発信という役割があるように思います」とも話す。

▽国内外との連携も視野

今年、国際シンポジウムを広野町で開催した。

「東日本大震災という戦後最大の国難に直面しましたが、私たちの願いは、住民の方々の幸せな帰町です。6月に国際シンポジウムを開催し、米国やスリランカ、インドネシアなど様々な国から参加してもらい、住民の方々と率直に意見交換しメッセージを採択しました。本音で語り合うふるさとを思う心を皆様と受け止めあい、そして新しい時代にその思いを継承していくことを」。

ふるさとを思い、人とのつながりを大事にする心は、国も地域も問わない。そんな心の原点を大切に、遠藤町長は今後「広野町から生まれた童謡に思いを込めて発信していきたい」と話す。広野町は「童謡の里」としても知られ、「ひろの童謡まつり」を毎年10月に開催し今年20年目を迎えた。


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