好転しつつも、依然厳しく 原産協会 産業動向調査結果発表

原産協会は20日、13年度を対象に実施した「原子力発電に係る産業動向調査」の結果概要を発表した。原子力発電産業に係る支出・売上げ、従事者を有する営利企業446社へ調査票を配布し、うち263社(電気事業者11社、鉱工業他240社、商社12社)から有効回答があった。

調査結果によると、13年度は、福島第一原子力発電所事故以降、減少を続けていた電気事業者の支出高が3年ぶりに増加に転じ、前年度から97億円増の1兆5083億円、鉱工業他の売上高も4年ぶりに増加に転じ、同428億円増の1兆5904億円となった。一方で、鉱工業他の受注残高は、同3049億円減の1兆6892億円で、依然として減少傾向だった。

原子力関係従事者数の推移をみると、前年度からの増加傾向が継続し、電気事業者で62人増の1万2424人、鉱工業他では1606人増の3万6153人、全体で1668人増の4万8577人となった。原子力発電立地地域の地元雇用者数は、2万2860人となり、従事者数に占める割合は、前年の43%を若干上回り47%となった。

また、電気事業者についてみると、13年度の原子力関係支出高は前年度比1%増の1兆5083億円となり、総支出高19兆3091億円の8%を占める結果となった。そのうち、前年度から支出が増加した費目では、「土地・建屋・構築物」の123%増が大きく、逆に、減少した費目では、「運転維持・保守・修繕費」(35%減)などがあった。

今回、新たに実施した新規制基準対応に関する調査で、13年度の支出額は、回答を得た電気事業者7社の合計で2060億円となり、これら7社の原子力関係支出高の31%を占めていた。さらに、11〜16年度までの新規制基準対応に関する支出総額の見通しは、回答を得た8社の合計で1兆3442億円だった。

同じく、新規の調査で、鉱工業他の原子力関係売上高を産業構造区分別にみると、「プラント既設」が前年から13%増加した一方、「フロントエンド」は同35%減、「プラント新設」は同8%減となった。業種区分別では、前年度から「建設業」が30%増となったが、「精密機器・電気機器、機械」が減少した。

また、業種区分で売上高の分布をみると、「炉メーカー」(4471億円)、「核燃料関連」(3082億円)、「建設」(2364億円)で、原子力関連売上高の約6割を占めていた。

さらに、14年度時点について尋ねた定性調査で、業界の景況感としては、「悪い」が10年以降からポイントを増やし今回、90%に達した。また、1年後(15年度)の見通しについては、「悪くなる」との回答が、前年から33ポイント減少し21%となったものの、「横ばい」が60%に広がった。

売上高の比較では、13年度に比べ14年度の売上げが「減少」するとの回答が19ポイント減少しているものの、48%と、依然として高い水準だった。また、15年度売上額が14年度と比較して「横ばい」または「減少」するとの回答は合計83%と、依然として厳しい経営環境が続くとの認識がうかがえた。

回答に応じた各企業担当者によると、原子力発電所の運転停止に伴う影響で、65%が「売上げの減少」をあげており、その減少の程度を2割以上とする回答が59%となっており、深刻な影響が懸念される状況となっている。

売上げ以外で、今後影響が想定されることとしては、「技術力の維持・継承」(45%)、「雇用・組織体制の縮小」(42%)が多く、国や電気事業者へ期待することとしてもあげられていた。また、原子力発電産業を進めるに当たっての課題としては、「政府の一貫した原子力政策の推進」の回答が最も多かった。


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