英・仏・西から現状と展望 原産協会が会員フォーラム開催

原産協会は4日、会員フォーラムを開催し、新設計画が順調に進展中の英国、日本企業に対するビジネス展開への期待や交流要請が高まっている仏国およびスペインの3か国から、それぞれの現状や今後の展望に関する講演を紹介した。

まず、在日英国大使館貿易対英投資部のK.フランクリン一等書記官が英国原子力産業の現状を説明。同国では2008年に政府が原子炉の新設を決断したが、その時点で原子力により何%の電力を供給するといった目標を定めなかったことは非常に重要だと指摘した。06年のロシア・ウクライナ間のガス紛争を引き金に、英国民の中にエネルギー安全保障が大きな問題として浮上。新設計画の支持率は福島第一原発事故後、36%に落ち込んだものの、翌年には事故前よりも高い50%の支持が得られたとしている。

現在、産業界では3つの事業者が2030年までに160万kWの原子力設備を建設する計画を進めているが、その電力取引には他の低炭素電源と同様、市場価格との差金決済(CfD)が導入される点を強調。こうしたシステムが確実に担保されてこそ、事業者は安心して大型投資を行い、供給チェーンを構築することが出来るとした。

日本との関連では、英国が廃止措置で長年の経験がある一方、日本は原子炉の新設経験を保持していることから、相互に補い合う協力が意味を成すと指摘。来年1月にロンドンで開催する新設計画や廃止措置の紹介イベントには、出来るだけ多くの日本企業の参加を希望すると述べた。

仏国大使館からはC.グゼリ原子力参事官が仏国原子力産業の概要と日仏両国産業界の協力について講演した。

日本と同じく化石燃料資源に乏しい仏国では、石油ショックを契機に「温室効果ガスを出さない技術」を中心に安定的なエネルギー供給を目指した。その結果、1年に5基ほどのペースで原子炉の建設が進み、現在は総発電量の75%を原子力で供給している。

原子力は再生可能エネルギーとともに今も仏国エネ政策の基軸だが、10月に議会が原子力関連部分を承認したエネルギー移行法では、2030年までに再生エネのシェアを32%まで引き上げる一方、原子力のシェアは25年までに50%に引き下げるとの目標値を明示。設備容量も現状レベルが上限とされたことから、フラマンビルで建設中の欧州加圧水型炉(EPR)を利用する場合、既存炉を2基ほど止めなければならないだろう。

日仏協力としては、すでに高速中性子炉の共同研究や再処理技術の六ヶ所への移転などが長期にわたって進展。三菱重工とアレバ社の合弁事業アトメア社によるトルコ等への原子炉輸出計画、高速実証炉「ASTRID」の開発計画では、今後一層の協力展開が期待される。

スペイン大使館のM.ゴンザレス=イスキエルド経済商務参事官らは進展中の原子炉廃止措置と廃棄物中間貯蔵施設建設を中心に次のように解説した。

エネルギー構成が日本と類似するスペインでは石油とガスのほぼ全量を輸入。持続可能かつクリーンなエネルギーをいかに国内で供給するかという観点から、1950年代から原子力の研究開発を開始した。60年代から70年代にかけて、米仏から様々な炉型の原子炉を輸入するなど、石油ショック後は特に開発にアクセルがかかったが、諸外国での事故を受けて80年代に新設がストップ。その後の経済成長により、現在では既存炉の運転期間延長などを検討している。

06年に運転を終了したホセ・カブレラ原発では10年から12年までに炉内構造物の解体が終わり、13年から15年までの予定で原子炉本体の解体作業を実施中。事業者が使用済み燃料を搬出した後は廃止措置責任が廃棄物管理公社(ENRESA)に移り、16年までに除染と跡地の環境修復が完了する計画だ。

使用済み燃料は直接処分する方針で、現在4000トンをサイト内で乾式貯蔵中。低中レベル廃棄物はコルドバにあるエル・カブリル処理施設に貯蔵しているが、すでに容量が50%に達しており、20年には満杯になる見通しだ。このため、国内すべての廃棄物を貯蔵できる容量7000トンの集中中間貯蔵施設の建設サイトを11年にビジャル・デ・カニャスに決定しており、18年の操業開始を目指して9月に土木工事の入札を開始している。


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