【2014年回顧】 事故の教訓踏まえ将来への取組を着実に

年の瀬となっての国政選挙も終わり、現政権の継続が見込まれる結果となったが、東日本大震災から4回目の年越しを迎えるところ、原子力災害被災地の福島県では今なお、12万人もの住民が避難生活を余儀なくされており、今後も、被災地域の復興をさらに加速させ、避難住民が1日も早く故郷を取り戻すことができるよう、続く政権においても、必要な施策が着実に推進されるよう望むばかりだ。

福島では、今年4月に田村市、10月に川内村で、一昨年4月の避難指示区域再編後、初めてとなる避難指示解除となった。しかしながら、被災者の視点に立つと、未だ課題が山積しており、解決に向けては、福島第一原子力発電所の安定化、汚染水対策などの廃炉作業が安全かつ着実に進捗することが不可欠だ。

福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策に関しては、4月に責任体制を明確にし、これを専門に担うことを目的とした「福島第一廃炉推進カンパニー」が東京電力に設立された。汚染水対策では、5月に「地下水バイパス」の運用が開始したのを始め、1〜4号機を取り囲む凍土遮水壁の削孔工事着手、多核種除去設備における放射性物質を用いたホット試験も成果を挙げるなど、サイト全体のリスク低減に向けた取組が着々と進展しつつある。また、昨年11月に開始した4号機使用済み燃料プールからの燃料取り出し作業では、使用済み燃料の移送が11月に完了し、新燃料についても、間もなく移送が完了する見込みである。

また、わが国における今後20年程度の中長期的なエネルギー政策の基本的方針をまとめた「エネルギー基本計画」が、4月に閣議決定され、原子力発電については、「安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置付けられた。今回の計画では、エネルギーの構成比については明示されておらず、現在、経済産業省に置かれた小委員会で、その具体化に向け、原子力、新エネルギー、省エネルギーの各分野の議論が進められているところだ。

国内の原子力発電に関しては、昨年の9月以来、全基が運転を停止しており、代替手段である火力発電のフル稼働に伴う化石燃料の消費および輸入量の増加によって、電力各社の収支は悪化し、電気料金値上げを余儀なくされ、国民生活や経済活動に大きな影響を及ぼしているほか、温室効果ガス排出量増加とともに、貿易収支では赤字額が拡大するなど、国家的損失も大きくなっている。

原子力発電所の再稼働に向けては、昨年7月の新規制基準の施行から、1年以上が経過した現在、その適合性を確認する審査で、これまでに11社21基が原子力規制委員会に申請されている。新規制基準施行直後に申請された十基のうちで、九州電力川内1、2号機については、「大きな審査項目をクリアした」ことから、3月より優先的に審査が進められ、9月に「審査書」の取りまとめ、原子炉設置変更許可に至った。それを受け、立地自治体では、住民説明会を経て、10月末に薩摩川内市、11月には鹿児島県より、再稼働に対する同意が表明された。その他のプラントでは、12月に関西電力高浜3、4号機について「審査書案」が取りまとめられた。

また、新規制基準の施行と時を同じくして、昨年7月より議論を開始した経済産業省の「原子力の自主的安全性向上に関するワーキンググループ」が、5月に提言をまとめたのを受けて、10月には電力中央研究所内に、事業者の自主的な安全性向上に向けた研究開発の中核的組織となる「原子力リスク研究センター」が設置された。

さて、国内の原子力発電プラントだが、1月末に福島第一5、6号機が廃止され、これで計48基となった。現在、福島第一原子力発電所事故前に着工した建設中3基は、いずれも運転開始時期が未定となっており、当面は、既存のプラントを活用することになる。一方で、40年運転の延長に際して、原子力規制委員会への申請期限を来年7月に控える高経年炉も7基存在し、同委では10月に、新規制基準の審査に要する期間を踏まえた延長申請を行うよう事業者に指示しているほか、経済産業省では、廃炉を円滑に進めるための会計関連制度の検討も開始された。この他、日本原子力発電敦賀2号機の活断層問題など、既存プラントを巡る課題も顕在化している。

核燃料サイクル関連では、新規制基準の適合性審査が途上となっている六ヶ所再処理工場のしゅん工時期が16年3月に延期されたほか、高レベル放射性廃棄物の処分地選定に関しては、科学的により適性が高いと考えられる「科学的有望地」の提示など、取組の改善に向けた検討が経済産業省で開始されるといった動きがあった。

外交関連では、4月にトルコ、UAEとの原子力協力協定が、11月に原子力損害の補完的な補償に関する条約(CSC)がそれぞれ国会で承認された。世界では今後、アジア地域を中心に原子力発電所の大規模な新増設が見込まれており、事故の教訓を反映した安全性の高い原子力技術の海外展開により、日本が国際貢献していくことが求められよう。


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