投資総額30年までに1兆ドル 世界原子力協会が世界の原子力投資動向を予測

世界原子力協会(WNA)は8日、今後15年間の世界の原子力関連投資動向を分析した報告書「世界原子力サプライ・チェーン=2030年予測」を公表した。原子炉の新設プロジェクトにより同年までに世界で総計1兆2000億ドルの投資が見込まれるが、その半分以上は中国を中心とするアジア地域におけるもの。これに伴い、中国サプライヤーが世界市場に台頭していくが、原子力産業界で予見される一層厳しい安全要件を満たせるよう、新興国のサプライヤーには能力的な向上が不可欠との見方を示している。

同報告書の標準シナリオでWNAは、2030年までに世界で266基の原子炉が新たに運転を開始すると予測した。これに伴う投資額は1兆2000億ドルと見積もられるが、発電所建設と既存炉の長期運転に向けた改修プロジェクトにより、原子力供給市場は年間300億ドルの規模になる見通しだ。最も成長率が大きい地域は、現時点で47基が建設中のアジア。2030年までにさらに142基が着工すると予想されることから、アジアでの原子力投資額は7810億ドルに到達する。中でも中国の原子力拡大計画は本格化しており、同国の新しいサプライヤーが世界市場に参入し始めると予測する。

このほかに成長が見込まれる地域は欧州と旧ソ連邦から独立した共同体諸国(CIS)で、潜在的な投資額はそれぞれ、1790億ドルと1630億ドルと見積もった。北米では現在、5基が建設中なのに加えて、7基の建設が予想されるが、2030年までの投資額は900億ドルになる見込み。アフリカと南米の投資額はそれぞれ200億ドルと140億ドルになるとしている。

廃止措置関連の事業機会も拡大していく見通しで、標準シナリオでは118基が閉鎖されると予想。これらの多くは欧州と日本の原発だ。2030年までの廃止措置市場は950億ドル規模に成長する計算で、このうち124億ドルは日本の福島第一原発サイトの除染コスト。また、少なくとも242億ドルが脱原子力政策を取るドイツで投じられることになる。

サプライ・チェーンにおける品質と能力上の目標達成は、信頼性のある効率的な国際供給基盤を保証する上で重要な問題。欧州と北米では安全関係の機器・システムの製造能力が新設計画数の先細りとともに失われていったが、新興国ではサプライヤーらが原子力産業界で要求される一層厳しい要件を遵守するために、能力向上を図っていく必要性を指摘した。


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