重粒子線効果は塊状 TIARAで 世界初の発見に成功

日本原子力研究開発機構は14日、重粒子線によって生じたDNAの複数の傷が極めて近接し塊状で存在していることを世界で初めて見出したと発表した。この結果により、重粒子線のがん治療効果がX線やガンマ線に比べ2〜3倍と高いのは、照射により生じたDNAの複数の傷が互いに近接し、密集して生じやすいためであると考えられる。

同機構原子力科学研究部門量子ビーム応用研究センターの照射細胞解析研究グループは、DNAの傷に蛍光分子という目印を付け、ナノメートルオーダーの距離に近接した蛍光分子の間で生じる蛍光共鳴エネルギー移動という現象を利用して、DNAの傷のミクロな分布(かたまり具合)を観察できる新しい手法を世界で初めて開発。この手法で原子力機構高崎量子応用研究所のイオン照射研究施設(TIARA)で発生させた炭素イオンビームをDNAに照射したところ、これまで観測できていなかった放射線照射により生じたDNAの傷の微視的な空間分布について、X線やガンマ線に比べるとDNAの傷がナノメートルオーダーで「かたまっている」ことを発見した。

重粒子線等の放射線で生じるDNAの傷のミクロな分布が明らかになったことで、重粒子線がん治療の高度化や重粒子線を含む宇宙放射線の人体影響の正確な評価にもつながると見られている。


お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで