ガンマ線で受粉専用品種 ニホンナシ 自家和合でコスト削減

農研機構は1月26日、人工受粉が要らない品種・全てのナシ品種に使える受粉専用品種の育成を可能とするニホンナシをガンマ線照射によって作出することに成功した。

ニホンナシは、自家不和合性という性質を持っているために、栽培で人工受粉作業を行う労力がかかる。人工受粉は花が咲いている短期間に行わなければならないため、生産規模の拡大や生産コスト削減の障害になっている。このため自分自身の花粉でも結実する自家和合性品種が求められている。

そこで、農研機構は農業生物資源研究所と協力して、花粉の機能に突然変異を起こした自家和合性のニホンナシ(415−1系統)を育成することに成功したもの。

農業生物資源研究所放射線育種場(茨城県常陸大宮市)のガンマーフィールドには、1962年から「幸水」など、ニホンナシの代表的な品種が植えられている。これらの樹は長期間のガンマ線照射により、一部の枝に自家和合性突然変異が起きている可能性がある。しかし、ガンマーフィールド内では大規模な自家受粉試験を行うことができないため、これまでに自家和合性の枝を発見することはできていなかった。

そこで、ガンマ線照射された「幸水」の樹から花粉を取り、ガンマーフィールド外(照射区域外)の「幸水」に受粉したところ、苗木1個体(415−1系統)を獲得することができた。

この苗木について、交配試験により、雌しべ側と花粉側のどちらが自家和合性となったのかを調査した結果、415−1系統は花粉側が自家和合性に変化したことを見いだした。

今後、様々な品種を交配し、広く品種改良に利用する予定という。


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