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vol04.制御できない発電出力が社会全体のコストを増加させる

2016年2月8日

脱原子力 ドイツの実像

ープフローへの対応可能電源の減少

電力潮流をコントロールするためには、火力発電のように、電源出力を意図的に変更できる電源が必要である。火力発電の中でもガス火力は発電出力の変更を行い易い電源である。しかし再生可能エネルギー電源の大量導入により、電力潮流をコントロールするためのガス火力が追い出されているのが実情だ。
 近年の再生可能エネルギー電源の急速な導入が、卸電力市場価格の下落をもたらしたと言われている。固定価格買取制度(FIT: Feed-in-Tariff) のもとでは、再生可能エネルギー電源を所有する事業者は、発電することによって、金銭的な補助を受け取ることができる。FIT のため、仮に、卸電力市場で取引される電力の価格がゼロ[€/MWh] やマイナスであっても、FIT の金銭補助を含めて利益が生じるのであれば、再生可能エネルギー事業者は喜んで発電することになる。電力需要の大幅な増加が見込めない場合、結果として、再生可能エネルギー電源の導入以前に、ピーク時間帯のみ発電していたガス火力発電は稼働されない( 図8参照)。
 図8 は再生可能エネルギー導入前後の卸電力市場の価格の変化を示した概念図である。再生可能エネルギーは売れないとFIT による金銭的な補助を受け取れないため、必ず売れるように安い価格で卸電力市場に売りに出される。再生可能エネルギー電源の導入量が少ない場合、供給曲線に再生可能エネルギー電源が占める割合は小さいため、発電できない電源は少ない。一方、再生可能エネルギー電源の導入量が多くなると、供給曲線に再生可能エネルギー電源が占める割合は大きくなるため、発電できない電源は増える。
 発電しない電源は採算のとれない電源となり、結果として廃止されることになる。
 この一連の流れによって、発電出力の制御ができ、ループフローの対応策の1 つとなりうるガス火力電源が、電力系統から追い出され、ループフローを悪化させる可能性がある再生可能エネルギー電源が残ることになる。

 
 

電線建設の遅延とドイツで採用されているループフロー対応策

 前述したように、ループフローが発生しても、大停電につながらないための対応策の1つが送電線の増強である。しかしながら、再生可能エネルギー電源の建設は、早ければ数カ月しか必要としない一方で、送電線の建設には、10 年以上の年月を要する(第3回地域間連系線等の強化に関するマスタープラン研究会 資料3-3, 2012)。その上、送電線の建設に対しては、規制側の認可等の申請手続きの他に、「Not in my back yard (NIMBY)」という表現が使われるように、欧州においても地域住民の反対が存在する。さらに地域住民の反対を乗り越えて、交流送電線の増強によって、インピーダンスは変わるものの、ループフローがなくなるわけではない。
 これまで述べてきたように、出力の制御が可能な電源が電力系統からなくなりつつあり、必要なタイミングで送電線を十分に建設することが難しい。この現在の状況において、ドイツで計画・採用されている対応策について、以下に紹介する。

 

・高圧直流送電(HVDC: High Voltage Direct Current) での送電

 メッシュ型の系統では、電力を交流で送る場合、送電線を指定して、必要な電力量を送るということはできない。交流送電線を追加的に建設する限り、インピーダンスの違いはあるものの、完全に電力潮流までも制御できるわけではない。必要な電力量を指定した送電線だけに送る1 つの方法は、交流送電線が送電系統のメインシステムとして使われている中で、単一箇所の接続のみに直流送電線を活用することである。交流から直流、直流から交流に電気を変換する装置を導入し、その変換する電力量を制御することで、計画的に送電する電力量を決定することができる。すなわち、ループフローが発生しなくなる。
 図9に2024 年に向けて、ドイツで検討されているHVDCの建設計画の概要を示す。ドイツでは、2024年において、導入される可能性がある再生可能エネルギー電源や火力電源のシナリオを作成し、そのときに必要な送電線を検討している。図9は、ある1 つのシナリオにおける各州での年間発電電力量と需要量を示している。発電電力量と需要量であるため、必ずしも電力潮流の方向と一致するとは言えないが、将来的にも北東から南西への電力潮流が予測される。そのため、それに合わせたHVDCの建設計画となっている。
 ただし、HVDCも万能ではない。HVDCでメッシュ型になるまで建設しても、HVDC を使って送る電力量を決めるTSO間の意思疎通がうまくいかないと、交流送電線で送っていたときのループフローと同じく、潮流が把握できなくなるため、HVDC の建設前と同じ結果になる可能性がある。また、HVDCも送電線の建設を必要とするため、地域住民の同意が必要であることは交流送電線の建設と同じ課題である。

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