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【報告】令和元年度「原子力人材育成ネットワーク」報告会、ジェンダーバランスとエネルギー安全保障などで意見交換

2020年2月25日

将来の原子力人材確保・育成に向けて産学官の関係機関が相互協力を図る「原子力人材育成ネットワーク」(以下、ネットワーク)の令和元年度報告会(主催:日本原子力研究開発機構)が2月12日、都内で開催され、産官学の関係者約60名が参加しました。当協会は、日本原子力研究開発機構等とともにネットワーク事務局を担当しています。冒頭、ネットワーク運営委員長を務める当協会の高橋明男理事長が挨拶に立ち、原子力分野におけるジェンダーバランス改善は、国際的にも喫緊の課題であること、また、ネットワークでは、今年度から日本全体で整合性のとれた人材確保・育成戦略案を策定する戦略WGを設立したので、戦略立案のため国との継続的な意見交換をしていきたいと述べました。

午前中の特別講演では、笹川平和財団の会長 田中 伸男氏と東京農工大学の副学長・女性未来育成機構長の宮浦 千里氏から講演がありました。
田中会長からは、「持続可能なエネルギー安全保障戦略:原子力の役割」と題して講演がありました。米国のシェール革命、ソーラー革命に代表されるようなエネルギー業界の大転換や、新たなエネルギー地政学が生まれているとしました。その中で、従来の石油依存ではない電力の時代の到来と太陽光発電と電気自動車用蓄電池の発電コストの大幅な削減を予測し、エネルギー自給率の低い日本は、エネルギー安全保障と持続可能性達成のために原子力発電所の再稼働や運転期間の延長、小型モジュール炉(SMR)の開発・技術革新を含むありとあらゆる方法を動員する必要があると述べました。また、各種エビデンスを用いて、エネルギー産業における女性の活躍とリーダーシップが地球環境問題解決に貢献すると述べました。

宮浦副学長からは、女性研究者の養成に関わる取組みと全国ネットワークと題する講演がありました。日本では女性研究者の比率が16.2%とOECD諸国で最下位であり、特に科学技術分野における女性研究者の活躍推進が課題であると述べました。東京農工大学では過去10年間にわたって農学・工学の女性研究者のライフイベント支援・環境整備等により、女性研究者や女子学生の飛躍的増加につながったことを紹介しました。また、平成30年度の文部科学省による全国的なダイバーシティネットワーク構築を目的とした全国ネットワーク中核機関事業に参画、「全国ダイバーシティネットワーク組織」「全国ネットワークプラットフォーム」といった2つの柱により、女性研究者を取り巻く研究環境整備や研究力向上に取り組む機関の全国ネットワークの構築を目指していると述べました。後者のプラットフォームではウェブサイトOPENeDを基盤として取組動向のデータ収集や分析、グッドプラクティス等の情報発信を実施しているとし、大学間連携による情報と課題の共有意義を強調しました。

また、午後前半の活動紹介セッションでは、当協会の上田欽一職員より、OECD/NEA主催「原子力分野におけるジェンダーバランス改善について」会議への参加報告がありました。この国際会議はリーダーシップ、科学技術分野におけるジェンダーバランスを含む多様性の拡大を背景に、NEAがこれまで実施してきていた、原子力分野での女性リーダー育成のためのメンタリングコース(通称:女子会)を政策レベルまでひき上げたものであるとの紹介がありました。参加者約40名(加盟国12カ国、3国際機関)のほとんどが女性であり、世界の原子力部門の従事者のうち女性の割合が22.4%というデータがある中、原子力部門への女性進出の妨げの要因、各国のジェンダーバランスの改善の取組みの現状や中長期的な目標について討議を行ったと述べました。

続いて、国際メンタリングワークショップ Joshikai in Fukushima (於コミュタン福島)の開催報告が、原子力損害賠償・廃炉等支援機構 国際グループの野原薫子氏からありました。福島の復興の課題のひとつに、理工系における人材不足があり、理工系への興味・関心を高める機会として、将来の進路を選択する時期にある女子中高生を対象にNEAと共催したと述べました。2017年には量子科学技術研究開発機構(QST)が、2018年には日本原子力研究開発機構(JAEA)が開催しています。全国の女子中高生43名の他、米国からも女子高生4名が参加し、理工系進学やワークバランス等をグループで議論する中で、自分の理想の将来像や課題を発見する機会となり、海外メンターや米国の女子高生との交流を通じて異文化を学び、モチベーションがあがったとの女子中高生の感想が紹介されました。次回(第4回)は2020年7月31日~8月1日に「理工系選択における私の可能性」をテーマに福島県双葉郡のJヴィレッジで開催されます。

ネットワークの桜井聡事務局長からは、ネットワーク参加機関数が80機関(設立時49)になったとの紹介の後、参加機関横断的に人材育成を検討する各分科会(初等中等教育、高等教育、実務段階人材育成、国内人材国際化、海外人材育成)の活動報告がありました。国内外の人材育成にむけ、JAPAN-IAEA原子力エネルギーマネジメントスクール(8回目)、世界原子力大学(WNU)・夏季研修(SI)の2020年日本開催にむけたWNUへの協力支援、IAEA国際スクール「原子力・放射線安全リーダーシップ」の日本開催に向けて東海大学への支援も行っていると述べました。

続いて、戦略WGの主査である吉村真人氏からは、効果的・効率的な原子力人材確保・育成を推進する為の戦略立案の策定と実行のため、戦略WGを設立し、また関係省庁連携会議を設置して国との継続的な意見交換を実施したいとの紹介がありました。今年度、各分科会での戦略課題の設定、関係省庁との意見交換、原子力委員会の見解を受けたネットワークの考え方の整理を通じて、ネットワークの活動の在り方とともに、原子力関係組織が自らの経営の一環として人材育成に取り組みながら改善を実施するという、原子力人材育成のあるべき姿が明確になったと述べました。

(参考:原子力人材育成ネットワーク ホームページ https://jn-hrd-n.jaea.go.jp)

■関連のWEB原子力産業新聞記事
○:「原子力人材育成ネットワーク」報告会、ジェンダーバランス改善の取組も(2020年2月13日)

お問い合わせ先:人材育成部 TEL:03-6256-9315(直通)

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