アルゼンチン:6基目の建設念頭にロシアと協力枠組設置

2015年4月27日

 アルゼンチンは4月23日、国内6基目の原子炉を建設するための協力枠組の設置でロシア政府と了解覚書を締結した。両国間の原子力平和利用協力協定は2012年末に一旦満了したが、両国は昨年7月、これに代わる政府間協定に調印。ロシアは今回の覚書を通じてこの政府間協定をさらに進展させ、原子力発電所建設に関する政府間協定の締結につなげることを目指している。

 アルゼンチンでは現在、エンバルセとアトーチャ両原子力発電所で加圧重水炉(PHWR)2基が運転中で、3基目のアトーチャ2号機(70万kW級PHWR)が昨年7月に送電を開始した。このPHWR路線と並行して同国がPWRの導入を検討していることから、ロシアは昨年の政府間協定締結時、4基目のアトーチャ3号機としてロシア型PWR(VVER)を提案する考えだった。しかし、アルゼンチンはその後、中国核工業集団公司(CNNC)の投資支援により4基目には70~80万kWのPHWRを建設すると決定。今年2月には中国と「アルゼンチンにPWRを共同建設するための政府間協力協定」に調印しており、5基目となるPWR建設にも中国が協力するとの見方が有力だ。

©TVEL社

       ©TVEL社

 6基目の原子炉建設を念頭に置いた今回の覚書は、アルゼンチンのC.フェルナンデス・デ・キルチネル大統領がロシアのV.プーチン大統領とモスクワで複数の両国間協力に合意した際、アルゼンチン計画投資省のJ.デビド大臣とロスアトム社のS.キリエンコ総裁が調印した(=写真)。ロスアトム社は、近代的な安全要件を完全に満たし経済効率にも非常に優れた第3世代+の120万kW級VVERを提案。この関連で、傘下の国際展開促進・マーケティング会社のルスアトム・オーバーシーズ社は同日、「アルゼンチンで原子力発電所を建設するための予備プロジェクト開発協定」をアルゼンチン国営原子力発電会社(NA―SA)と締結した。これにより、6基目をロシアの技術で設計・建設する契約の調印に向けた活動スケジュールを策定予定で、双方の協力範囲や権利と義務、財政面およびその他の条件を特定している。ロシアはこの中で技術移転や優遇金利貸付といった包括的提案も表明。将来的には両国共同で南米やアフリカの第三国にVVERを販売することも視野に入れている。

 また、この前日にロスアトム社傘下の燃料企業であるTVEL社がアルゼンチン原子力委員会(CNEA)および同国国営エンジニアリング会社のINVAP社のそれぞれと協力了解覚書に調印した。原子力発電分野の幅広い協力に関する共同イニシアチブや活動に備えた内容で、アルゼンチンの研究炉や発電炉向けのTVEL社の低濃縮ウランとジルカロイ機器の納入が含まれるとしている。