スイス:廃棄物地層処分の試験場で18年前の試験コンテナ掘り出し

2015年5月27日

試験コンテナの掘り出し作業©NAGRA

   試験コンテナの掘り出し作業©NAGRA

 スイスで放射性廃棄物の処分事業を担当する放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は5月22日、グリムゼルの原位置実証試験場(GTS)地下トンネル内に18年前に据え付けた試験コンテナの掘り出しを開始すると発表した。深地層処分の埋め戻し材に使われるベントナイトの力学的・物理的・化学的挙動に関する重要データを得るのが目的で、コンピューターによる解析モデルの確証等に活用し、将来建設される深地層処分場の開発に役立てる。掘り出し作業は6月末まで続くとしている。

 スイスでは高レベル放射性廃棄物(HLW)のみならず低中レベル廃棄物も深地層に埋設する方針が法律で定められており、2010年2月までに選定した6つの候補エリアの中から高レベル用と低中レベル用それぞれについて、各2エリアに絞り込む作業が進展中。NAGRAは現在、堆積岩であるオパリナス粘土中への処分を検討しているが、GTSはもう一つの選択肢である結晶質岩の地下環境を有しているため、処分場開発や方法論の検討、モデル開発に資する現実的な条件下での研究が日本を含めた12か国の国際協力により進められている。

 実規模で人工バリアの試験を行う「FEBEX」試験は、スペインの廃棄物処分事業実施主体のENRESAがリーダーとなって1994年から開始。ベントナイトや周辺岩盤に及ぶと思われる長期間の熱影響について調べるため、1997年にHLWの放射熱を模した熱源入り試験コンテナを試験装置に2つ組み込み、地下トンネルのベントナイト中に据え付けた。このうち1つは2002年に装置の一部を解体して掘り出しており、装置内に設置した500以上の計測センサーの7割以上が正常に機能していたことが判明。今回掘り出すコンテナはそれ以降、13年が経過していることから、データの比較を行うことになっている。