米大統領、米中原子力協力協定の改定を議会に提案
4月21日付けの米連邦官報によると、同国のB・オバマ大統領は今月10日、今年12月に満了予定の米中原子力平和利用協力協定を更新すると決定し、議会に通達した。同協定により共同防衛やセキュリティ上、大きなリスクが生じることはないと判断し、原子力法123条に従って改定協定案を認めると明言。これに伴い、ホワイトハウスは21日、改定協定案とその核不拡散上の影響を評価する文書(NPAS)を上下両院の担当委員会に送った。議会審議が行われる90日間に同協定の承認に反対する共同決議などが出されなければ、審議期間の終了と共に発効し、30年間有効となる予定だ。
米国の原子力協力協定は、米企業が主要な原子力資機材の輸出を行う際に不可欠な法的枠組で、必要な要件と発効手続きを第123条に規定していることから123条協定とも呼称される。現行の米中原子力協定はレーガン大統領が1985年に議会に提出し、クリントン大統領が1998年に認証した。オバマ大統領は提案した改定協定案がすべての法的要件を満たしており、核不拡散と外交政策上の利益を進展させると指摘。現行協定どおり原子力による発電や研究のための技術や情報、原子炉を含む資機材の中国への移転を容認しているとした。ただし制約データの移転はその限りでは無く、機微な技術や施設、それら施設用の重要機器も同協定を修正しない限り移転されない点を強調している。
産業界は歓迎
米原子力エネルギー協会(NEI)はこれを受けて、「議会が早急に協定の改定手続きを進めるよう望む」とコメント。同協定によって国際的な原子力安全やセキュリティ、および核不拡散という重要問題において米国が継続的にリーダーシップと影響力を行使することが出来るとの見解を表明した。また、同協定を通じて米国から数十億ドルもの資機材やサービスが輸出されると指摘。これには全米の多くのサプライヤーやサブ・サプライヤーが係わることから、米国内で何万人もの雇用が生み出されるとの期待を示した。
さらに、中国は2020年までに5,800万kW、2030年までに1億5,000万kWの原子力設備開発を計画しており、原子力関係では世界最大の市場になると明言。米国から輸出した機器や技術は、中国が最も安全な原子力技術を展開することを可能にしており、同国市場での米国の強力なプレゼンスや、中国が米国技術を採用することで両国間の絆が深まり、中国における安全慣行の大幅な進展につながるとしている。
議会の懸念
一方、米国議会調査局(CRS)の報告書によると、米国籍のウェスチングハウス(WH)社技術に基づく原子炉の輸出を中国が計画していることは米国内で多くの懸念を生じさせている。WH社によるAP1000技術の移転協定は、中国内で同技術を使用する包括的な許可を中国に与えているが、知的財産権はすべてWH社の保有。しかしながら、WH社はAP1000の拡大版(CAP1400)を輸出する権利を中国に与えており、その初号機が将来的な輸出を念頭に今年中にも中国で着工されつつあるとした。
また、現行の協定では、米国の事前合意があれば中国は米国が平和利用目的に設計した原子炉の使用済み燃料を再処理することも潜在的に可能。中国は現在、1.8トンの軍用プルトニウムを蓄積しており、米国の商業炉技術が中国の兵器用プルトニウム増産をどの程度許すかが議会における議題の一つになるとした。同報告書は中国への移転技術は現時点で平和利用目的に限定されているものの、同国が将来的にこの制限を無視すると決めた場合、商業炉の通常運転で生産されたプルトニウムを核兵器に使用する可能性があると警告している。