米規制委スタッフがワッツバー2号機への運転認可発給を勧告
テネシー峡谷開発公社(TVA)が米テネシー州で建設中のワッツバー原子力発電所2号機(ウェスチングハウス社製PWR、120万kW)について、米原子力規制委員会(NRC)スタッフが「規制要件を満たしていると判明し次第、運転認可(OL)を発給すべきだ」とNRC委員に勧告していたことが5月8日に明らかになった。TVAとしては7月にも燃料を装荷し、年末までに運転を開始したい考えで、残りの作業が順調に進めば同炉は1996年に同発電所1号機が運転開始して以来、米国で20年ぶりの新設原子炉になる。NRCは1973年、当時の許認可手続きに従い、ワッツバー原子力発電所で原子炉2基を建設する許可を発給した。1号機は1996年に運開したものの、TMI事故後の安全要件追加や電力需要の低下などからTVAは1985年に2号機の建設工事を停止。その後2007年に約25億ドルの予算で同炉を完成させる計画を決定し、08年1月に工事を再開していた。
今回のOL発給勧告は、2号機完成計画の現状を審査したNRCスタッフによる政策見解として委員に宛てた4日付けの書簡に盛り込まれていた。それによると、原子炉安全諮問委員会(ACRS)は今年2月時点で同炉へのOL発給を支持。同炉の運転が住民の健康や安全に過度のリスクを与えないことや、残りの点検と未解決課題への取り組み完了後にOL発給することは合理的に保証できるとしていた。また、TVAは昨年10月から今年3月にかけて、同炉が福島第一事故に基づく使用済み燃料プールの水位計測要件と設計基準外事象の影響緩和策を遵守している点をNRCに通達。NRCスタッフも同発電所サイトでTVAの対応計画を審査した上で、同炉が福島第一事故にともなう両要件に適切に対処可能だとする安全評価結果を3月末に発行していた。
こうした状況から、NRCスタッフは「2号機の建設工事と試験活動が終わりに近づき、NRCの建設査察と許認可作業も概ね完了しつつあることから、NRCは近い将来に同炉のOL申請について判断を下すことになる」との結論を提示。NRC委員への勧告として、フル出力のOL発給権限を原子炉規制局長に与えるよう要請している。ただし、3月にTVAと公聴会を開催した際、残りの手続き項目が膨大で、温態機能試験の準備やNRCの点検などのスケジュール調整が複雑との指摘があった模様で、実際のOL発給までには数か月を要するとの見方もある。