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(米国)低線量影響に関する新データ――直線仮説に疑義

2011年12月28日

 米国バークレー国立研究所による最新の研究結果は、放射線影響が線量に対して比例するという直線しきい値なしモデルに疑いを投げかける結果となった。


 生きている細胞は、いろいろな形の電離放射線に絶えず曝されている。その全てはDNAに損傷を与える可能性があり、この損傷が自己修復メカニズムで修正されない限り、ガンまたは悪性腫瘍になる可能性がある。


 直線しきい値なしモデルは高線量被ばく、つまり原爆被爆者の統計学的分析から運用されているが、自然界、医療あるいは原子力発電から受ける低線量の影響については、研究するのも難しい分野であり、十分に解明されないままである。


 この不確実性のある低線量の分野に対処する一般的方法は、高線量の観察結果を外挿する方法が取られている。つまり、どんなに低い線量を被ばくしても、影響が明らかではないが影響があるものとしての前提に立っている。


 DNAが放射線被曝量に比例してヒットを受けるとの仮定はそれなりの説得力はある。しかし、バークレー研の生命科学者のミーナ・ビッセル氏は「我々のデータは低線量でのDNA修復メカニズムは、高線量での修復メカニズムより非常によく動くことを示している」と話し、これが「どんなに低線量でも有害であるという直線しきい値なしモデルに疑いを投げかけるものである」と述べた。


 彼女らはいろいろな線量でのDNA修復メカニズムを理解するため、経時的に細胞動態を観察した。 放射線誘発フォーカス(RIF)と呼ばれているDNA二重鎖切断の周辺で集中するDNA修復タンパク質を確認でき、時間とともにDNAの切断された端が、細胞核内で実際に『修復中心』として知られているより大きなRIFsに集まっていた。


 本研究のリーダーであるシルバン・コステス氏は「『修復中心』では多数の修復が同時に起こっているが、修復にはある確率でエラーが生じる」と述べている。さらに「例えば人類が進化を通して経験してきた自然放射線レベルの低線量では、どんな細胞でも一度に複数のDNA鎖切断を修復しなければならないような状況は考えにくい」としている。


 この研究は、タイムラプス観察法によってはじめてRIFsがつくられる前のクラスター化と同様にRIFsを観察したものである。


ロンドン帝国大学のゲリー・トーマス分子病理学の教授はWNNに対し、「新しい研究は非常にすばらしいが、これが試験管内のモデルで、生体内で組織反応を完全に代表しない場合があるので、注意が必要」と前置きしながらも、「非常に興味深く、チェルノブイルで被ばくした多くの人が低線量であり、今回の結果と合致するであろう」と述べた。


さらに、「ガンのために放射線治療されている患者がなぜ2回目の腫瘍にかかる可能性が少ないのかを証明する可能性がある。 放射線療法において、患者は腫瘍に高線量を照射されるが、周囲の組織は必然的に低線量の放射線を受けているにもかかわらずだ」とも述べた。


コステス氏は、「研究チームは現在、研究用に不死化させた細胞ではなく、健康な細胞を使って同様の実験を行い、今回観察した上皮細胞と同様に線維芽細胞でも結果を見る予定である。


彼らのもう一つの目的は、DNA切断のクラスター化の機構であり、修復中心が移動するのか、先在しているかどうかをみるものである。


 


 


(20111221日付WNN)


(原産協会・国際部まとめ)


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研究室のシルバン・コステス氏

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