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2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けて

2020年10月26日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 新井 史朗

 本日、菅義偉首相が2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言し、省エネルギーの徹底と再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで安定的なエネルギー供給を確立すると表明された。

 2018年に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した特別報告書「1.5度の地球温暖化」は、脱炭素化の目標は原子力なしでは達成できないことを明らかにした。国際エネルギー機関(IEA)は、2019年に公表した「クリーンエネルギーシステムにおける原子力」で、パリ協定の目標を達成するにはエネルギー効率改善と再生可能エネルギーとともに、原子力の大幅な増加が必要としており、いま多くの国々は原子力利用による気候変動緩和に注目している。

 エネルギーシステムの脱炭素化には、排出削減のみならず、供給安定性と経済性の視点が重要であり、原子力はこれらすべてに貢献することができる。
 発電時にCO2を排出しない原子力発電は、わが国の例で試算すると100万kWあたりのCO2排出削減効果は約310万t-CO2/年であり、現在日本の温室効果ガス排出量の約4割を占めている電力部門の脱炭素化に大きく貢献することができる。一方、とりわけ社会の基盤を支える電力には、安定供給はもとより、国民の負担を低減し産業競争力を確保するために低廉な価格が求められる。間欠性を有する再生可能エネルギーの導入拡大は電力供給システムのコスト増大をもたらすため、24時間365日、ベースロード電源として安定的に低炭素電力を供給できる原子力を組み合わせることにより、脱炭素化とコスト抑制による電気料金の低廉化を同時に達成することができる。
 そのためには既存の原子力発電所の再稼働を着実に進めるとともに、2050年に向けて運転期間の延長や新増設を検討することが必要である。
 
 また、2050年実質ゼロの目標を達成するためには、電力のみならずあらゆる部門での排出削減が必要となる。10月13日に出されたIEAの「世界エネルギー見通しWEO 2020」では、再生可能エネルギーや原子力による電力は、輸送や産業などの電化を通じて全体的なエネルギー消費における排出削減に役立つとしている。
 さらにWEOによると、水電解水素製造装置から小型モジュール式原子炉に至るまで、幅広い技術のイノベーションの加速が必要である。日本でも製鉄などの産業分野の排出削減のため、高温ガス炉による水素コジェネレーションシステムの実用化に向けた研究開発等が進められている。

 今般開始された次期エネルギー基本計画の策定においては、将来にわたる原子力の活用を含め、2050年温室効果ガス排出実質ゼロ目標の達成に向けた幅広い議論に期待したい。
 われわれ原子力産業界は、原子力発電のたゆまぬ安全性向上と安定運転に努めていくとともに、当協会は関係機関と連携・協力して、脱炭素社会の実現に貢献する原子力の価値について国民の皆さまにご理解を深めていただけるよう努めて参りたい。

以 上

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